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モンゴルの大気汚染、世界最悪に。首都ウランバートルは、北京よりPM2.5汚染が5倍も。伝統の住居ゲルの石炭暖房や自動車排ガスが盆地状地形で滞留(RIEF)

2016-12-26 19:02:32

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 「世界最悪空気賞」というのがあったら、今年の大賞はどの国に贈られるでしょうか。中国?。いえ、上には上があるのです。スモッグで包まれる北京より5倍も大気が汚染されていると認定されたのがモンゴルの首都ウランバートル。住民たちの抗議運動も起きている。

 

   先週末(12月24日)のウランバートルのBayankhoshuu地区の大気の状態を、中国が公表している6段階の大気質指数(Air Quality Index:AQI)に当てはめると、最悪レベルとなる「危険」水準(300以上)を倍以上、上回る761となった。

 

 300以上のレベルは、「高齢者や子ども、心臓・肺疾患患者らは屋内にとどまり、体力消耗を避ける、すべての者は屋外活動を中止する」という指示が出る。ウランバートルはその水準をさらに倍上回る大気汚染が日常化しているわけだ。

 

 中国の大気汚染で問題になったPM2.5の汚染レベルは、12月16日の観測で、Bayankhoshuu 地区で1985マイクログラムを記録した。世界保健機構(WHO)が安全レベルとみなすPM2.5の水準は一日平均で25マイクログラム以内。その79.4倍の高水準だ。日平均でも1071マイクログラムとなっている。

 

  これほどの汚染が進むのは、ウランバートルが盆地状の地形で、冬場の各家庭やオフィスの石炭等による暖房器具からの排出のほか、石炭火力発電、自動車の排ガスなどが街全体に滞留する構造になっていることが大きい。特に伝統的な移動式住宅ゲルの暖房の石炭が汚染源となっている。

 

 同じく、大気汚染が深刻な中国の場合、PM2.5が400マイクログラムを超過した先週12月20日に、政府は351便の航空機の発着を禁じた。また1200以上の工場についても操業停止や生産抑制を指示して、太鼓船物質の排出抑制を強化した。北京のPM2.5レベルは今冬の最悪が378。中国でもっとも高い汚染は河北省の石家荘市で先週の初めに記録した1000マイクログラム超となっている。しかし、モンゴルの汚染はその上をいくレベルだ。

 

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 モンゴル政府は住民の暖房を伝統的な石炭炊きから、電気暖房への切り替えを促進するため、深夜電力料金を50%削減するなどの措置を打ち出し、1月からは深夜料金をゼロにするとしている。長期的対応として、中国の融資を活用してゲルなどの移動式住宅等を、電気暖房が可能な恒久的なアパート建設に切り替えていく、としている。電源の切り替えと、貧困対策の両方の解決を目指すものだ。

 

 ただ、ゲルに住む住民をアパート住まいさせることは、住民の伝統生活との関係だけでなく、同国の経済事情から容易ではない。経済危機に見舞われた同国は、現在も財政支出については国際通貨基金(IMF)等との調整が必要とされる。

 

 健康影響が懸念される高齢者や子どもたちを守るため、国防大臣Bat-Erdene Badmaanyambuu 氏は、首都にある軍事病院を肺炎症状を起こしている子どもたちを収容するため開放すると宣言した。というのは、市内の病院はすでに呼吸器疾患の患者等で満員になっているためという。

 

 国連児童基金(ユニセフ)は、同国の子どもたちが危険な状態におかれているとして、今月初め、緊急のウォーニングを発した。5歳以下の子どもや妊婦が特に脆弱な立場に置かれている。ソーシャルメディアでは子どもたちや高齢者を守るため、学校などに空気清浄機100台の設置を呼びかけるクラウドファンディングに5日間で1400ドルが集まったという。