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世界の主要機関投資家等217機関、各国政府に対して「気候変動抑制は投資の安全に重要」と公開書簡提出。7月にG20サミットでの宣言を要請。日本勢は姿無し(RIEF)

2017-05-09 18:24:10

investor1キャプチャ

 

 世界の主要機関投資家、運用会社等217機関が、パリ協定に基づく気候変動対策の実施を求める公開質問状を、G7、G20を構成する各国政府に対して出した。賛同した運用機関の総資産額は15兆㌦(約1650兆円)に達する。気候変動の抑制は「投資の安全にとって重要」と訴えている。トランプ米政権の出現で、一部に出ているパリ協定見直し論を牽制する形だ。

 

  公開書簡は、国連責任投資原則(PRI)、気候変動リスクを評価するCDP、米環境NGOのCeresなどが支援する形でまとめられた。各機関投資家等は、2015年のパリ協定調印に向けた14年9月にも、同様に気候変動対策をとる喫緊性を問う書簡を公開している。

 

 今回の書簡では、国際合意となったパリ協定において、各国政府が約束した国別削減目標(NDCs)の達成に向け、必要な政策を講じるよう強く求めている。さらに、NDCsの目標がパリ協定が目指す目標(世界の気温上昇を産業革命前から2℃より十分に低いレベルに抑え、さらに1.5℃への引き下げに務める)と、整合性のある長期気候計画を策定するよう求めている。

 

 さらに、パリ協定の目標達成のために、7月にドイツで開くG20首脳会議において、気候変動問題と持続可能なエネルギー供給とエネルギー効率化の進化を優先課題とすることを歓迎するとしている。その一方で、3月のG20財務相会議のコミュニケで、気候変動、気候金融、気候適応の各テーマに対する言及が、米国の反対でなかったことを指摘。米国を含む各国政府に向けて、7月のG20サミットでは、明確な気候変動対策を打ち出すよう要請している。

 

 そのうえで、公的セクターと民間セクターが気候変動対策のために、グローバル経済全体を通じて、求められる数兆㌦の資本を誘導し、インセンティブを示すことがきわめて重要、と強調している。市場資金を気候変動に振り向けるには、低炭素資産への投資を支援する政策の枠組みを作り出す必要があるとしている。

 

 そのために各国政府がとるべき対策として、①金融システムの流動性を改善・発展し、②気候変動関連情報の信頼性の向上と比較可能性を高め、③気候変動リスクと機会の評価を金融評価に効果的に統合する手法手段の利用を確実にする、などの諸点をあげている。

 

 15兆㌦の資産を抱える217機関の共同行動の影響は大きい。ただ、2014年9月の公開書簡時には、賛同金融機関数は409機関、総資産額は24兆㌦だったのと比べると、機関数は半分近く減ったほか、総資産額も6割強に減った点が気になる。トランプ政権の気候変動に後ろ向きな姿勢を先取りした機関が多かったのか、あるいは公開書簡とりまとめの時間的制約があったのか。

 

 もう一つ気になるのが、賛同メンバーの顔ぶれだ。CalPERS(カリフォルニア州職員退職年金機関)等、世界の主要な年金、資産運用会社が前回同様に名を連ねた。しかし、前回は日本勢も3社の名があったのに、今回はゼロ。わずかに、オリックスが主要株主であるオランダのRobecoとそのESG子会社であるRobeco SAMの名があるだけ。国際的なESG活動を期待されている年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の名は、どこにもない。

 

https://www.ceres.org/sites/default/files/Fact%20Sheets%20or%20misc%20files/Updated%20Global%20Investor%20Letter%20to%20G7%20%26%20G20%20Governments.pdf