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スイス 国民投票で脱原発政策を容認。東電事故からの教訓を重視。来年1月から新エネルギー政策に転換(各紙)

2017-05-22 10:41:52

suissキャプチャ

 

 各紙の報道によると、スイスは21日、将来的な脱原発を柱とする現行のエネルギー政策を見直す国民投票を実施、可決した。開票結果は見直し賛成が58.2%だった。6つの準州を含む全26州のうち、反対が多数となったのはわずか4州。国民投票の結果を受けて、政府は来年1月から脱原発に向けて政策修正を進めることになる。

 写真は、スイス北部デニケン近郊にあるゲスゲン原発)

 

 スイス政府は2011年の東京電力福島第一原発事故後に新規の原発建設凍結と、現在稼働する原発5基の段階的な停止を決定し、エネルギー政策を進めてきた。

 

 スイスの電力供給では、豊富な水力資源を利用した水力発電が全体の約52%を占める。原発はこれに次ぐ発電量で約35%を占める。主力の水力は、冬期はダム・河川が凍結するので、10月~3月は原発の比率が上昇する。また隣接するドイツなどからの輸入も一定割合ある。

 

 スイスでは1990年の国民投票で、安全上の理由から原発について、10年間の開発の凍結を決めた。その後、モラトリアム解除に伴う2003年5月の国民投票で、約60%の反対により開発凍結は否決され、原発再稼働にかじを切った。しかし、日本の東電事故で原発政策を含むエネルギー政策全体の見直しが国民的議論になってきた。

 

 昨年9月には、脱原発を目指して太陽光や風力などの再生可能エネルギー発電を推進する法案を議会が承認した。しかし右派、国民党は「1世帯当たり年間3200スイスフラン(約37万円)の追加負担が必要となる」と反対し、国民投票を求めた。

 

 そこで昨年11月に実施した国民投票では、原発5基全てを2029年までにストップするとした「緑の党」の提案が掛けられた。だが、投票した国民の54.2%が急速な段階的廃止に反対と投票し、賛成票は45.8%に止まった。またスイス26州の内20州が反対し、いったんは否決された。

 

 今回の国民投票でも、反対派は再エネ推進での国民負担が大きすぎると否決を求めた。だが、スイス国民は新たな負担が発生しても脱原発政策を容認する道を選んだことになる。未曽有の原発事故を引き起こした日本政府と日本国民が、原発再稼働を推進、容認しているのとは対照的な対応といえる。

 

 今後、水力発電に加え、太陽光、風力、地熱、バイオマスなど他の再生可能エネルギーへの依存度を高めていく方針だ。直接民主制のスイスでは、国政上の重要案件を国民投票で決定する。国民投票が成立するためには、投票者の過半数および州の過半数の賛成が必要という条件がある。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201705/CK2017052202000109.html

http://www.afpbb.com/articles/-/3129019