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米最大公的年金のカルパース、投資先企業のセクハラ案件の情報開示をESG投資原則に盛り込む方針。企業価値にマテリアル(重要)な影響と判断(RIEF)

2018-04-22 00:07:36

CalPERSキャプチャ

 

 米国最大の公的年金、カリフォルニア職員退職年金基金(CalPERS)は、投資のESG基本戦略であるガバナンス・サステナビリティ原則(GSP)に、投資先企業内で起きるセクハラ案件の開示を求める方針だ。財務情報基準は、企業価値にとって重要な(マテリアルな)情報開示を求めており、経営層等によるセクハラ問題は、企業経営のカジ取りへの疑念を高めるためだ。

 

 カルパースは今月開いた投資委員会において、GSP原則で定める企業情報開示を改定して、セクハラ案件の開示を原則の一つとして新たに導入する方針を示したという。

 

 委員会で提案された改定案によると、カルパースが定めるサステナブル投資のための5年間のESG投資計画や、2017-18年の投資戦略へのESGリスク統合を目的とするビジネス計画に盛り込む方向だ。組織内での異論がなければ、5月に開く理事会で、全ファンドにまたがる新原則として承認される見通しだ。

 

 カルパースがセクハラを「企業の重要なリスク」と位置付けるのは、同機関の投資において、すでにセクハラ問題の影響が起きているためだ。最近発覚した事例では、3200億㌦を投資しているリゾート会社のWynn Resorts 社で、創設者のSteve Wynn氏が多くの女性に対してセクハラ行為を行っていたことがウォールストリートジャーナル紙によって報道された。このため、同社株は急落、カルパースも大きな投資損失を被っている。

 

 企業経営陣によるセクハラ行為は、他の企業不祥事にも増して、当該企業の経営への不信感を高めるとの判断だ。こうしたカルパースの判断は、企業ではないが日本の財務省の事務次官のセクハラ発言に置き換えると、財務省の組織的価値は「投資に値しない」ジャンク株(ボロ株)レベルに落ち込んだことを意味する。

 

 カルパースは新たに設定したサステナブル投資プログラム担当のマネージング投資ディレクターに、Beth Richtman氏を就任させた。Richtman氏は、カルパースのESGチームを率い、ESG要因を全投資分野での投資判断にESG要因を統合させることを推進する役割を担当する。

 

 カルパースはすでに3月、2018年の財務リターンを改善するための投資先企業へのエンゲージメント戦略の優先事項として、男女、人種、年齢等のダイバーシティ(多様性)の評価と気候リスクの情報開示をあげている。

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