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中国の今年上半期のグリーンボンド発行分のうち、約3割は国際基準GBPなどと適合せず。資金使途の一部がグリーン事業以外に流れたり、石炭関連だったり。国別基準の課題露呈(RIEF)

2018-07-31 21:12:35

ChinaGB4キャプチャ

 

   今年上半期の中国のグリーンボンド発行額は前年同期比14%増の130億㌦(1兆4300億円)と伸びた。だが、うち約3割は国際的な市場基準のグリーンボンド原則(GBP)等に適合しないことがわかった。日本や中国では、国際基準とは別に自国主義の国別ガイドラインによる発行を認めているが、投資家はそうした市場でのグリーンボンドの「グリーン性」について、よく吟味する必要があるといえる。

 

 英非営利団体のClimate Bonds Initiative(CBI)の分析による。今年上半期でグローバルなグリーンボンドの発行額は769億㌦に達し、そのうち中国企業・金融機関等の発行分の比率は14%となった。しかし、この中国版グリーンボンドのうち、同ボンドの国定的な市場基準とされるGBPやCBIのクライテリアへの適合したものに限定すると、37億㌦少ない93億㌦に減ってしまう。全体に占める比率も12%にダウンする。

 

 CBIによると、37億㌦の基準不適合の「薄いグリーンボンド」のほぼ半分は、調達資金の5%以上を、グリーンプロジェクトにではなく、発行体の運転資金等に”流用”している、という。GBPもCBIも、グリーンボンドの調達資金の使途は、原則100%グリーン事業に充当することを基本としている。

 

国際基準に適合しない中国版グリーンボンドの推移
国際基準に適合しない中国版グリーンボンドの推移

 

 中国では金融機関によるグリーンボンド発行は中国人民銀行のガイドラインと承認に基づく。一方、一般企業については国家発展改革委員会(NDRC)のガイドラインと承認に基づく。今回の分析で、資金使途が運転資金に充当されていた「薄い」グリーンボンドは一般企業発行分が多いという。

 

 また基準不適合グリーンボンドの45%は、「国際的な基準には適合せず、国内基準だけによって認められる分野」(CBI)に充当されていた、と評価された。国際基準による除外分野は、石炭火力発電、大規模ダム等を想定している。中国の場合、超々臨界圧石炭火力発電(USC)などへの融資を「クリーン・コール」として認めているが、国際基準ではこうした資金使途は一切認められない。

 

 CBIによると、基準不適合グリーンボンドの発行額は前年同期比でみると、10億㌦前後も増えている。日本の上半期のグリーンボンド発行額は6件975億円(環境金融研究機構調べ)なので、増額分だけで、日本での発行額全体を上回ったことになる。

 

中国のグリーンボンドの資金使途
中国のグリーンボンドの資金使途

 

 その日本市場でも、環境省が「日本版」と称して、国際基準とは適合しないグリーンボンドの発行を奨励している。環境省版の場合、GBPの4つの基本原則をすべて満たさなくても国内市場発行分については、グリーンボンドとみなすほか、資金使途については、50%超がグリーン事業に向けられれば、同省の補助金(税金)を配布するという”緩い基準”。

 

 特に資金使途の扱いは、中国よりも緩く、国際基準を一切無視している形だ。今年上半期に日本市場で発行されたグリーンボンドの多くは、環境省版よりも厳格なGBPへの適合を前提としているため、それよりも緩い環境省版にも結果として適合する形となっており、「薄いグリーン」というわけではないものが多い。ただ、2月に発行した鉄道建設・運輸施設支援機構のように、環境省版にしか適合していない場合は、グリーン性に疑問が残る可能性もある。


 上半期の中国の発行分のうち、44%は金融機関によるもので、32%が企業発行。残りは「その他」となっている。金融機関発行分は総額57億5000万㌦で、最大の発行体は中国工商銀行(ICBC)のロンドン上場分の16億㌦を含め総額23億㌦。地域銀行10行も合計19億㌦を発行した。上半期発行分の4割は海外市場での発行だった。

 

 資金使途の36%は再生可能エネルギー事業で、30%は低炭素輸送事業、廃棄物処理が11%、グリーンビルディングなどの低炭素ビル事業10%の順。発行ボンドの74%はセカンド・オピニオン等の第三者認証を得ている。

 

https://www.climatebonds.net/files/files/China%202018%20H1%20Report_EN%20final%281%29.pdf