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ドイツの今年上半期のエネルギー生産に占める再エネ比率47.3%。初めて石炭火力と原発の合計比率43.4%を上回る。

2019-07-26 18:09:36

ドイツの発電に占める再エネ発電比率の月別推移。

 

  ドイツの今年上半期の全発電に占める再生可能エネルギー発電の比率が、初めて、石炭火力と原子力を合計した発電比率を上回った。ドイツ政府は、原発、石炭火力の両方からの離脱を政策に掲げている。上半期の発電状況は、現実の電力生産において、再エネ電力が安定的に増える一方、石炭・原発からの減少分は天然ガス発電でカバーされ、電力供給全体は安定的に推移するという構図が鮮明になってきた。

 

 (上図は、ドイツの今年上半期の月別再エネ比率。赤は2018年の年間比率。青は月別比率)

 

 ドイツのフライブルグを拠点とする再エネ研究機関の「フラウンホーファー太陽エネルギーシステム研究所(Fraunhofer Institute for Solar Energy Systems:ISE)」)が7月にまとめた集計で明らかになった。

 

全発電に占める太陽光発電の比率は初めて10%台に
全発電に占める太陽光発電の比率は初めて10%台に

 

 それによると、今年1~6月の上半期中の太陽光、風力、バイオマス、水力の各再エネ発電の合計発電量が全発電量に占める比率は、過去最高の47.3%となった。2018年全体の47.1%より、0.2%増と微増。一方、石炭火力と原発による発電量比率は43.4%で、その差3.9%で再エネが上回った。

 

 再エネの種類別では、風力発電が全体の24.3%を占め、18年末から3.7%増。太陽光も1.7%増で比率10.2%と、初めて10%台になった。

 

 月別では、3月の比率が53.9%ともっとも再エネ比率が高まり、5月、6月も50%を上回った。通常、ドイツでは冬の暖房期や夏場の冷房期に電力需要が高まリ、石炭火力等の発電比率が高まる。その間に位置する春秋は、電力需要が相対的に少ないので再エネ比率が高まる傾向にある。今年上半期も、1~2月の厳冬期の再エネ比率はそれぞれ40.8%、40,9%と、春秋より10%ほど低い。

 

 この結果、発電部門から排出されるCO2量は、前年同期比で約15%削減された。燃料となる石炭のうち、火力発電に使われる一般炭の需要は前年同期比で30%も低下した。またドイツに多い亜炭や褐炭・泥炭等の低品質のものは約20%の低下。一方で天然ガスの利用は同10%増となった。

 

各再エネ発電の割合
各再エネ発電の割合

 

 ISEのBruno Burger教授は「石炭火力については、市場ベースで、発電燃料のガス転換が進んだといえる」と指摘している。こうした燃料シフトは、天然ガス価格の下落に加えて、EUの排出権取引制度(EU-ETS)の影響も後押ししたとみられる。

 

 ETSでは、石炭火力発電の場合、排出するCO2を相殺するため、カーボンクレジットを購入することになる。そのクレジット価格が上昇を続け、現在は、1㌧29ユーロ前後にまで高まっており、石炭火力にとってコスト増となっており、発電事業者のガスシフト要因のひとつになったとみられる。

 https://www.ise.fraunhofer.de/en.html