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2011年国連気候変動バンコク会議の報告(WWF Japan)

2011-04-12 21:39:45

WWF Japanによるバンコクでの国連気候変動会議の報告です。:2011年4月3日から8日まで、タイのバンコクで地球温暖化に関する国連会議の特別作業部会 会合が開かれました。これは、6月に予定されているドイツ・ボンでの会合とあわせて、「カンクン合意」の中身の進展をより具体的に進めて、2011年末の南 アフリカ・ダーバンでのCOP17での合意を目指す一つの重要なステップとなる会議です。

カンクン合意のゆくえを問う


2011年初めての気候変動に関する国連会議の特別作業部会会合(第16回京都議定書特別作業部会及び第14回長期的協力行動に関する特別作業部会)が、4月3日から8日まで、タイのバンコクで開催されました。

2010年末のメキシコ・カンクンでのCOP16/CMP6で決定された「カンクン合意」では、京都議定書の第2約束期間の合意は先送りされましたが、アメリカを含めた先進国の削減目標と、途上国の削減行動を、国連文書に落とし込むことや、先進国から途上国への削減行動及び適応への資金援助、森林減少防止などの中身に関する議論について、具体化の方向が見えてきています。

中でも重要なのは、冒頭2日間半にわたって開催されたワークショップです。具体的な議論の場ではありませんが、各国がそれぞれ自主的に申請している削減目標や削減行動について、どれだけを国内削減で行ない、森林吸収源はどれくらい使う予定か、またオフセットは使用するのか、などの重要な目標の内実について、話し合う機会となるものです。

こうした作業を通じて、全体としてまだまだ世界の気温上昇を平均で2度未満に抑えるための目標に足りない点を、いかに積み上げていけるか。世界がそれを探ることになります。

関連情報



会議参加報告


ボン、そしてダーバンへ


2011年初めての気候変動に関する国連会議の特別作業部会会合(第16回京都議定書特別作業部会及び第14回長期的協力行動に関する特別作業部会)が、4月3日から8日まで、タイのバンコクで開催されました。

2010年末のメキシコ・カンクンでのCOP16/CMP6で決定された「カンクン合意」では、京都議定書の第2約束期間の合意は先送りされましたが、アメリカを含めた先進国の削減目標と、途上国の削減行動を、国連文書に落とし込むことや、先進国から途上国への削減行動及び適応への資金援助、森林減少防止などの中身に関する議論について、具体化の方向が見えてきました。

今回のバンコク会合では、6月に予定されている、ドイツはボンでの会合とあわせて、中身の進展をより具体的に進めて、2011年末の南アフリカ・ダーバンでのCOP17での合意を目指していくことでした。 

進展の無い作業部会


ところが、京都議定書の第2約束期間の目標を議論する作業部会(京都議定書AWG)と、気候変動枠組み条約の下ですべての国の参加する新しい枠組みを議論する作業部会(条約AWG)の二つともにおいて、中身の話はほとんど進展しませんでした。

京都議定書AWGでは、「第2約束期間についての話(もっとも合意が困難な論点)を進めなければ、吸収源やオフセットのルールなどのテクニカルな話を進めても意味がない」と途上国側が強く主張して、議論を進めず、それぞれの国が言いっぱなしのままで、6月のボン会議へと持ち越されました。

また条約AWGでは、カンクン合意に基づいたアジェンダ(話し合うべき論点)を、議長が当初提案しましたが、途上国側が大反対。2007年のバリ会議で合意されたバリ行動計画までさかのぼって、バリ行動計画に基づいたアジェンダ設定をするべきだと強く主張し、バンコク会議1週間は、結局今後何を話し合うべきかというアジェンダを設定することだけで終わってしまいました。

錯綜する各国の意図


なぜバリ行動計画に戻りたいかということには、諸説ありますが、一つの大きな動機は、京都議定書と新枠組みの二つの枠組み方式を前提としているバリ行動計画のほうが、基本的にブレッジ&レビュー(自主的に目標設定し、レビューしていくこと)方式を前提としているカンクン合意よりも好ましいという理由。ただし、カンクン合意はバリ行動計画を基にしているので、本来は同じ路線であるはずです。

また、カンクン合意は参加国がぎりぎり合意できるものを抜き出した形なので、抜け落ちている論点も多々あります。その抜け落ちた論点を復活させたいとする途上国に対し、交渉を前進させた論点を作業計画がついた形で進めていけるカンクン合意から、交渉が後退し、再び混迷してしまうと懸念する先進国側が難色を示したというものです。

途上国と言っても130カ国以上の経済発展度も違う国の集まりであり、統一した途上国の意見というわけでもなく、そこに京都議定書締約国、法的拘束力のある枠組みを批准できないアメリカなど、さまざまな立場の思惑が複雑にぶつかってアジェンダ設定でこれだけもめたようです。

歩み寄りの結果


しかしこのままバンコクでアジェンダも設定できないならば、2011年の交渉は非常に困難を極めるので、せめてそれだけは途上国、先進国双方が歩み寄る形で、最終アジェンダが決定されました。

最終アジェンダは、ほぼバリ行動計画の形に戻り、そこに頭にカンクン合意を実施していく旨が取り込まれ、また最後に法的拘束力のある結果を求めていく旨が入っています。

カンクン合意では抜け落ちたセクター別アプローチ(国際航空・運輸セクターからの排出を議論できる論点)、産油国が主張していた対応措置などが再登場しています。1週間かかっての成果がこのアジェンダ設定と思うと、焦燥感も漂いますが、これは通らなければならなかった道かもしれません。

京都議定書の第2約束期間が成立するか、また次の枠組みが法的拘束力のあるものになりえるのか、アジェンダで争うといことは、これらの必然的な問題をめぐって争っていることでもあるからです。ずっと先送りしてきた問題がいよいよ噴出している、という見方もあるでしょう。

しかし、カンクン合意で合意された内容は、あとは粛々と実施していくだけ、というわけではありません。その懸念が大きい途上国ですが、カンクン合意は決してこれが「天井」ではなく、ここから積み上げていく「床」になるものです。

少しずつ気の遠くなるような努力で積み上げてきた歩みから戻るのではなく、その上に積み上げていく努力を、先進国、途上国ともに進めていくことを強く願っています。
(2011年4月11日)

関連情報


WWFインターナショナルのサイト(英語)

Wrangling in Bangkok Delays Progress in UN Climate Talks, Says WWF