米サステナビリティ会計基準審議会(SASB) 非財務情報開示の基準案を公開。90日間のパブリックコメント期間に入る。グローバルに意見を求め、来年第一四半期中に基準化(RIEF)
2017-10-05 20:26:07
SASB(米サステナビリティ会計基準審議会)は、ESG要因などの非財務要素を米証券取引委員会(SEC)の財務報告書に記載する際の独自基準案をまとめ、パブリックコメントを求める手続きに入った。対象となるのは11産業79業種で、12月31日までの90日間にわたってグローバルにコメントを受け付け、それらを反映した基準を来年第一四半期に公表する予定だ。
米国ではSECに提出する財務報告書において、非財務情報の扱いが規則S-Kで求められている。しかし、その具体的な開示手法が明示されていないことから、民間の非営利団体であるSASBは、2015年春に自主的基準として10産業79業種の暫定基準(Provisional Standards)をとりまとめた。その後、11産業79業種に整理し、暫定基準への投資家等からの修正意見等を踏まえ、今年8月、修正意見を加味した「テクニカル・アジェンダ」を公表した。
今回公表された基準原案は、これらテクニカル・アジェンダでの修正意見を反映したもの。対象となる11産業79業種は変わらないが、テクニカル・アジェンダで示された248件の修正を取り込んだ。
SASBが対象とする非財務情報の開示ガイダンスは、SEC基準で財務報告書の提出を義務付けられる米国内企業(10-K)、米国上場外国企業(20-F)などの財務報告書のほか、四半期報告書(10-Q)、臨時報告書(8-K)、新規上場時などのS-1、S-3、一定のカナダ企業向けの40-Fなどでの記載の参考に提供される。
SASBは民間非営利団体だが、理事長のMichael Bloomberg氏は、グローバル情報会社Bloombergの創始者であり、先ごろ報告された金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の座長も務めている。SASBが今回公開した基準案は、TCFDがフォーカスした気候変動情報を核に、その他の環境、社会関連のESG情報開示におけるマテリアルな情報を産業・業種ごとに整理したものとなる。
SASBの基準案はあくまでも民間による自主的な基準である。ただ、SEC報告書の非財務情報開示を求める規則S-Kの開示ガイドダンスとしてSASB基準を活用する企業が増えると、市場標準として定着することになる。SASBは産業・業種ごとに基準を示すことから、同一業種内の横並び評価(peer review)が可能となり、投資家にとって利用しやすいメリットもある。
SASBの基準原案とコメントの送付については以下のリンクを参照。
<SASB基準案の対象>
▼ヘルスケア(6 業種)
バイオテクノロジー、医薬品、医療機器・供給、ヘルスケア販売、ヘルスケア物流、管理医療(マネージドケア)
▼金融(7業種)
商業銀行、投資銀行・ブローカレージ(証券業)、資産運用・カストディアン、消費者金融、住宅金融(モーゲージ金融)、証券・商品取引所、保険
▼テクノロジー・コミュニケーション(6業種)
電気機器製造・ODM、ソフトウェア・ITサービス、ハードウェア、半導体、通信、インターネットメディア・サービス
▼資源採掘・鉱物処理(8業種)
石油・ガス(採掘・生産)、同(中流)、同(精製・マーケティング)、同(サービス)、石炭操業、鉄・鉄鋼製造、金属・採掘、建設資材
▼輸送(8業種)
自動車、自動車部品、レンタカー・カーリース、航空、航空輸送・ロジステック、海運、クルーズライン、鉄道輸送、道路輸送
▼サービス(10業種)
教育、専門・商業サービス、ホテル・ロッジ、カジノ・ギャンブル、レジャー施設、広告・マーケティング、メディア・エンターテインメント
▼資源変換業(5業種)
化学、宇宙・防衛、電気・電子製品、産業機械・製品、コンテナー・パッケージ業
▼食品・飲料(8業種)
農産物、肉類・乳製品、加工食品、非アルコール飲料、アルコール飲料、タバコ、食品小売・卸業、レストラン
▼消費財(7業種)
アパレル・アクセサリー・靴、家電製品製造業、生活・個人用小物、建材・家具、おもちゃ・スポーツ用品、量販店・専門店、Eコマース
▼再生可能・代替可能エネルギー(6業種)
バイオ燃料、太陽光技術・プロジェクト事業者、風力技術・プロジェクト事業者、燃料電池・産業用電池、森林管理、パルプ・紙製造
▼インフラストラクチャー(8業種)
電力・発電、ガス・配ガス、水管理・サービス、廃棄物管理、エンジニアリング・建設サービス、住宅建設業、不動産、不動産サービス