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英銀HSBC、2050年までに総額1000億㌦のサステナブル投融資実施をコミット。2030年までに再エネ100%を達成、石炭火力向け融資を減らし、先進国での新規投融資は停止を宣言(RIEF)

2017-11-10 00:25:14

HSBCキャプチャ

 

   国際金融機関の英HSBCは、気候変動対策や持続可能な成長支援のため、2050年までにサステナブルな投融資を総額1000億㌦(約11兆3000億円)実施すると公表した。同時に、同グループが使用する電力を2030年までに100%再生可能エネルギーに切り替え、先進国市場での新規石炭火力発電への資金供給の停止、気候関連財務情報タスクフォース(TCFD)の勧告に沿った情報開示なども約束した。

 

 グループCEOのStuart Gulliver氏は「今回のわれわれのコミットメントは、低炭素経済社会に移行するためのチャレンジの規模を示している。われわれは、官民がともにこの移行を果たせるよう、リーディング・グローバル・パートナーになることを目指す」と決意を語った。ドイツで開いている国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)に向けてエールを送った形だ。

 

 1000億㌦のサステナブルな投融資は、パリ協定の実現に資するクリーンエネルギー技術や低炭素技術の開発のほか、国連の持続可能な成長目標(SDGs)の実施事業を支援する形で、グローバルに供給することを目指す。

 

 使用電力の100%再エネ化は、欧米のメーカーや産業の宣言が進んでいるが、金融界ではまだ例が少ない。2030年の再エネ100%の前に、中間目標として2025年までに90%達成を目指すとしている。目標達成のためには再エネ事業者との長期的な調達契約を結ぶ見通し。その再エネ事業に対してもサステナブル投融資を供給する予定という。

 

 CO2排出量の多い石炭火力発電については、各地でNGOなどが銀行の投融資対象から除外すべきと求めている。これに対して、HSBCは全体的に石炭火力関連の投融資を減らすほか、他の化石燃料部門の業種転換の活動に積極的に関与していくとし、特に先進国市場では新規の石炭火力発電への投融資は原則停止することを盛り込んだ。

 

 また石炭鉱山への開発資金の供給は世界的に停止する、とした。ただ、先進国市場で石炭火力を新規に建設しようとしているのは、日本市場ぐらい。NGOなどは、途上国での石炭火力プロジェクトへのファイナンスの停止を求めており、HSBCの石炭火力対応は不十分で、実効性に乏しい、との批判を受けそうだ。

 

 金融安定理事会(FSB)の気候財務情報開示タスクフォース(TCFD)は今年7月、その報告書をG20に提出、付属文書として採択された。報告書の勧告は、まず自主的に気候変動に伴う財務への影響についての情報開示を求めている。HSBCは勧告に従って、今後、2期にわたって、グループのアニュアルレポートで取り組み、透明性を高めたいとしている。

 

  Gulliver氏は「過去、10年以上にわたって、HSBCは、主に欧州やアジア市場でグリーンボンド市場を新たに開き、発展させるために、発行体や投資家等を支援してきた。また、世界中で気候変動に適合する最大規模のインフラ建設事業へのファイナンスにも取り組んできた」と述べ、今回のコミットメントもそうした実績の積み上げの結果、と位置付けた。

 

 実際に、HSBCはここ数年、グリーンボンドやソーシャルボンドの市場基準(グリーンボンド原則)の整備・展開活動に積極的に取り組んできた。また、自らも総額5億ユーロのグリーンボンドを発行、気候変動関連の研究・分析面でも評価を高めてきた。1000億㌦の投融資はこうした実績を踏まえて、展開されることになる。

 

 HSBCのコミットを皮切りとして、国際大手金融機関の間で、サステナブルファイナンスの資金供給競争が始まる可能性も期待される。

http://www.hsbc.com/news-and-insight/insight-archive/2017/hsbc-makes-new-sustainability-pledges