「脱石炭」の保険引き受け停止、欧州から米国に波及。米大手Chubbが新規石炭火力や石炭関連収入30%以上企業の新規保険停止。既存契約も2022年までに解消。日本の損保は(?)(RIEF)
2019-07-02 22:16:06
米大手総合保険のChubb(チャブ)は1日、新規の石炭火力発電事業あるいは、収入の30%以上が石炭関連の企業への保険を引き受けないほか、既存の石炭関連保険も2022年までに引き受けを停止する等を宣言した。投融資でもそれらの企業は対象外とする。米大手保険で明確な「脱石炭」路線を示したのは初めて。
Chubbは損害保険から生命保険、医療保険等を幅広く提供する総合保険業。日本にも拠点を持つ。同社のCEOのEvan G. Greenberg氏は「われわれは気候変動が現実であることと、地球上の人類の活動に重大な影響があることを理解している」と述べ、「脱石炭」宣言をした。
同社が公表した「チャブ石炭政策(Chubb Coal Polcy)では、保険引き受けでは3分野、投資事業では1分野の方針を示している。
①新規の石炭火力発電事業の建設と操業については、7月1日以降、保険引き受けをしない。近くに代替エネルギー源がない地域あるいは保険契約者が石炭依存を減少させることを明確にしている場合は、2022年までは例外として認める。
②石炭鉱業については、燃焼用石炭からの収入が30%以上ある企業への新規保険は引き受けない。この基準に抵触する既存企業向けの保険契約については、2022年までに解消する。
③発電事業者等については、石炭からの電力・エネルギー生産が30%以上の企業の新規保険引き受けは停止するほか、それらの企業向けの既存の保険契約についても2022年までに解消する。
投資分野でも、同様に収入の30%以上という基準を上回る企業株には投資しない。同方針も7月1日以降、適用する。
保険業界は、温暖化の加速による自然災害の増大で、本業の保険ビジネス自体の収益にも影響が及んでいる。台風や洪水等の増大による経済的損失はグローバルに3370億㌦(約37兆円)、保険会社の保険金支払い額も、1440億㌦(約15兆8000億円)に達している。
すでに欧州の保険大手のアリアンツ(独)、アクサ(仏)、ジェネラリ(伊)、ロイズ保険(英)等の各社は、昨年までに石炭関連企業の保険引き受けの限定方針を明確化している。さらにチューリッヒ(スイス)も先月、脱炭素方針とともに、「1.5℃目標」を目指す国連グローバルコンパクトの「Business Ambition Pledge」への署名方針を打ち出した。http://rief-jp.org/ct6/91217
保険会社の保険を引き受ける再保険大手のスイス再保険、ミュンヘン再保険も、ともに同様の方針を示している。この結果、再保険市場の3分の1が石炭関連保険引き受け停止を明確にしている。
Chubbは2016年に米エース・リミテッドがチャブコーポレーションを買収して誕生したチャブグループの保険会社。2018年度の実績は資産1678億㌦、総収入保険料(GWP)380億㌦、正味収入保険料306億㌦(NWP)の世界最大級の保険会社。
チャブの主要市場は米国だが、こうした欧州を中心とする保険業界の「脱石炭」路線をフォローする姿勢を明確化したのは、欧州保険市場から締め出された高リスクの石炭関連企業の保険ニーズが、Chubbに集中する「逆選択」リスクを避ける狙いもあるとみられる。日本の損害保険各社の石炭関連の対応も注目される。
http://news.chubb.com/2019-07-01-Chubb-Announces-New-Policy-on-Coal-Underwriting-and-Investment
https://www.chubb.com/us-en/about-chubb/chubb-coal-policy.aspx