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エネルギーシナリオ市民評価パネル 報告書「エネルギー・環境のシナリオの論点」発表 (FOE)

2012-06-01 18:08:53

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政府のエネルギー・地球温暖化政策の複数の選択肢が、国民に示されようとしています。報告書では、2012年夏に決定予定のエネルギーと地球温暖化対策のあり方を考える上で重要な論点を検討し、注意してみるべき経済や産業のあり方、社会の選択肢とその意味を示しました。さらに、各NGO提案のシナリオに共通するビジョンとその実現可能性を検討しました。

「エネルギーシナリオ市民評価パネル(エネパネ)」とは

各種エネルギーシナリオや、関連論文・情報について評価・分析をおこない、エネルギー・シフトを進める観点からその成果をとりまとめ、発信する市民パネル。
http://www.facebook.com/enepane

過去に発表した報告書:
Ⅰ.発電の費用に関する評価報告書 2011年10月
Ⅱ.IEA事務局長の日本の原発シナリオの問題点 2011年11月

 






報告書「Ⅲ. エネルギー・環境のシナリオの論点」
 >ダウンロード [62ページ/PDF・2122KB]  >プレスリリース[PDF]○勧告
 >論点要約(抜粋)はこちら・原発、気候変動、化石燃料の限界と制約を踏まえれば、私たちには「省エネ・自然エネ切り替え社会」を選ぶしか道はない。これからの日本では、2030年には確実に原発ゼロとなっている社会をめざし、具体的なタイムスケジュール、工程表を策定すること

・脱原発社会は、気候変動問題を犠牲にすることでも、経済を犠牲にすることでもないことを、本報告書で明らかにした。電力システムを改革し、産業構造を転換し、新たな経済・産業を興していくことで、日本を再生する方針を明確に示すこと

・明確な方針の下、脱原発とともに、省エネ目標、再生可能エネルギー導入目標、温室効果ガス排出削減目標を、本報告書の市民団体のシナリオに基づき野心的に設定すること

上記目標を達成するために、具体的な政策・措置の導入、既存の政策の見直しを速やかに実施し、今後もその見直し・強化を取っていくことが可能なプロセスを構築すること

選択肢の決定の際には、民意を限りなく公正に反映するべく、国民的議論をおこない、民主的に日本のこれからのあり方について決定すること

○おわりに~2050年のビジョン (抜粋)
2050年の日本では、限りある資源の中でエネルギーを自給し、大量消費社会から浪費を抑制する社会へと転換し、自分たちにとって本当に必要なエネルギーがどれくらいなのかを意識したライフスタイルを送っていることだろう。

エネルギーの無駄や損失は限りなく省かれ、自然環境の豊かな恵みや地域ごとの特性を最大限に活用する社会へと移行し、そのような時代のニーズに合った新しいサービスや産業が発展しているだろう。そして人々は家族や共同体など社会の繋がりの中で生きていることを実感しながら、自然環境や資源を大切に利用し、新しいライフスタイルの中に真の豊かさを追求しているだろう。

すでに「持続可能な社会」に向けて、その動きはいまもあちこちで芽吹いている。そして、人々の価値観も確実に変わりつつある。その変化を捉え、今、決断するのは、現世代の私たちである。日本は今、その転換の時にある。


○論点要約(抜粋)
2030年のエネルギー・環境政策の選択のための論点
・原発、気候変動、化石燃料の限界と制約を無視して、未来をバラ色に自由に選ぶ選択肢は私たちには残されていない。

・政策議論では、今もなお経済成長とともにエネルギーが増えると認識されている。2030年の産業の生産量などを右肩上がりで過大に想定した上で「省エネは難しい」と議論することは問題。資源・環境制約を前提に、エネルギー・CO2を減らすことで環境負荷を減らしながら、経済を発展させ雇用を増やすビジョンを描くことが必須である。

・同じ負担でも、国内で循環する再生可能エネルギーへのお金、海外へ流出するだけの化石燃料へのお金、エネルギーコスト低減効果が期待できる省エネへのお金それぞれで意味が異なる。また、現世代の負担を軽くすることは、将来世代に負担を先送りすることを意味する。

・原発立地地域の経済に関しては、地域住民に帰属するメリットには他地域と特段の差が見られない。福井県の場合、原発を停止する代わりに県内での他の分野の生産比率を向上させれば、同じだけの雇用効果が得られる。また原発運転存続より、廃炉事業の方が県内の経済効果が期待できる。

・エネルギー社会の未来像は、「原発温存社会」・「化石燃料使い切り社会」・「省エネ・自然エネルギー切り替え社会」の3つが想定できる。「原発温存社会」は、原発関連ビジネスには将来性も経済合理性もない中で、事故後日本が何も決断しない社会に等しい。「化石燃料使い切り社会」は、環境破壊の道であり、経済優位性の低下、供給リスクなど、不安定な社会となる。「省エネ・自然エネ切り替え社会」は、最も持続可能な選択肢である。

・電力システムを、「大規模集約」型から「地域分散」型へどうシフトするかは私たちの選択である。地域に分散する再生可能エネルギーを増やすために、広域に送電を統合して中央制御を行うシステム、発送電分離、再生可能エネルギーの系統への優先接続、需要マネジメントシステムなどの整備が必要となる。

持続可能なエネルギー環境シナリオとその実現可能性
・NGO5団体が出したシナリオと、政府系のシナリオとの違いは、①原発廃止を前提としている ②より大きな省エネの可能性を示し、なかでも産業部門の削減率が大きい ③将来の再生可能エネルギー中心の社会を想定、再生可能エネルギーの大幅普及を見込んでいる  ④2020年に90年比25%、2030年には46~58%のCO2削減を見込んでいる などに顕著にみられる。

・原発とCO2はトレードオフでなく、省エネの強化で原発を減らしながらCO2を減らすことができる。大幅な省エネ実現には、エネルギー消費の多い発電・産業部門の熱利用、効率向上、リサイクル割合の増加、オーバースペックの解消、石炭から天然ガスへのシフト等に余地がある。キャップ&トレード型の排出量取引制度、炭素税導入、石炭規制、住宅・建築物対策などの政策の導入も求められる。

・再生可能エネルギー導入について指摘される課題は、将来に向けて解決が可能。割高な発電コストは、むしろ、化石燃料・原発依存のコストに予測される大幅な上昇に比べ、近い将来安くなる。電力システムの課題は、広域での系統運用を実現し、出力調整、需要側のマネジメントシステムを組み合わせれば、蓄電池などコストがかかる方法に頼らず解決できる。雇用効果は大規模集約型発電システムより大きい。

http://www.foejapan.org/energy/news/120531.html