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太陽電池、成長する2技術 衰退する2技術 米調査会社(AFP)

2012-06-15 07:07:31

【6月12日 RenewableEnergyWorld.com】技術そのものとは無関係の要因によって価格の安定化という面で奮闘を強いられている太陽電池業界にあって、どの技術が成長し、どの技術が過去のものになるのかを予測することは難しい。

 しかし米調査会社ラックスリサーチ(Lux Research)は、新たに発表した報告書「Searching for Game Changers in Photovoltaics Materials Innovations(光起電材料イノベーションに大変革をもたらす企業を探して)」の中で、成長が見込まれる注目の技術と、いずれ衰退すると思われる技術について詳しく述べている。

 同報告書は、現在行われている技術開発への投資額と、2014年には業界の利益率が2桁に復帰するとの予測を主な根拠にしている。利益率がその水準に戻れば、現在は注目されていない技術が市場に投入される環境が整うだろう。

 また報告書は、中国が製造拠点としての役割を担い始めた一方で、米国は今後もイノベーターの役割を担うとの見方に対して警告を発している。光起電力システム(PV)の主要技術の多くは米国の研究機関・学術機関が開発したものだが、中国は自国の大学と政府研究機関に多額の投資を行っており、米中間の技術格差は近いうちになくなるだろうとラックスリサーチは指摘している。

■成長が期待される2技術

・ エピタキシャルシリコン :

 基板になる半導体の表面に、結晶層の方位が基板材と同じになるようにシリコンの薄膜を形成したエピタキシャルシリコン(epi-Si)は、アモルファスシリコン(a-Si)に引導を渡す技術だと報告書は述べている。実際、a-Siの太陽電子パネルを手がけていた米ユナイテッド・ソーラー(United Solar)は破産し、エリコン(Oerlikon)はa-Si薄膜事業を売却した。

 a-Siの問題点は、テルル化カドミウム(CdTe)系や、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)を用いるCIGS系などの他の薄膜太陽電池と比較して効率が低いことだ。エピタキシャルシリコンは、a-Siより高い効率を発揮してa-Siに取って代わる潜在力を持っている。

・ CZTS : 
 
 銅(Copper)、亜鉛(Zinc)、スズ(Tin)、硫化物(Sulfide)を用いる太陽電池セル技術は、CIGSより安価な素材を用いた代替技術として過去数年間注目を浴びてきた。CIGSに使われるインジウムとガリウムはいずれもレアアースで、価格が高く、資源も不足しがちだ。

 米IBMや米デュポン(Dupont)など一部の大企業がCZTSを研究しているが、銅、インジウム、セレンを使ったCIS薄膜太陽電池を手がける日本のソーラーフロンティア(Solar Frontier)もCZTSを研究している。ラックスリサーチの専門家らは、CZTSには熱安定性が低いという問題が残っているものの、今後5年以内に商用化可能な規模に達し、他の薄膜太陽電池と競争できる価格になると見込んでいる。

■衰退が見込まれる2技術

・ イオン注入 : 
 
 イオン注入は近年大きな注目を集め、このための装置を導入すれば既存のウエハー技術に比べて経済的にいかに大きな節約になるかということが取り沙汰されている。

 固体素子デバイスの製造装置メーカー、米ツインクリークス・テクノロジーズ(Twin Creeks Technologies)によれば、350平方フィート(約32平方メートル)のイオン注入装置は1年間に設備容量6000キロワット相当の太陽電池セルを生産できる。技術が進むにつれて生産量が増えるのは確実だが、それでもイオン注入の設備投資額は高すぎるとラックスリサーチは指摘する。また、既存のワイヤーソー技術と比較してスループットが低い上、追加の工程も必要になる。

 一方で米シリコン・ジェネシス(Silicon GenesisSiGen)とツインクリークスはセルの変換効率を今も発表していない。パイロットプラント建設のための資金2500万ドル(約20億円)を手にしたばかりの米ソレクセル(Solexel)は、単結晶太陽電池で変換効率12.6%を達成したと発表しているが、この数値についてラックスリサーチは、開発段階だとしても結晶シリコン(c-Si)太陽電池としては低すぎると指摘している。

・ 量子ドットとナノワイヤ :

 量子ドットとナノワイヤ技術は、既存の薄膜太陽電池より使用する材料が少なくて済むため、学術機関の研究者らが投資を行ってきた。だがいずれの技術も表面積が大きくなり、不動態化(腐食しにくくするため表面に薄膜を形成すること)が困難になる。さらに、これまでのところ変換効率は商用化に必要な水準をはるかに下回っている。予期しない飛躍的な進歩がない限り、どちらの技術もすぐに商用化されることはないだろうと、ラックスリサーチは分析した。(c)RenewableEnergyWorld.com/Steve Leone/AFPBB News

執筆者のスティーブ・レオン(Steve Leone)氏はRenewableEnergyWorld.comのアソシエート・エディター。RenewableEnergyWorld.comにこの記事の原文(英語)が掲載されています。

http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2884012/9112385