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電力からのCO2排出量 昨年度は10.7%増、一昨年比では約3割増。原発停止後の無規制の石炭火力シフトを反映(FGW)

2013-10-11 16:04:32

電力対象のC&Tを導入すればCCSも普及する
電力対象のC&Tを導入すればCCSも普及する
電力対象のC&Tを導入すればCCSの普及も加速する


政府のまとめによると、一昨年3月の東京電力福島原発事故以来、原発停止に伴って東電をはじめとする各電力会社が、石炭火力発電等にシフトしたことで、CO2(二酸化炭素)排出量が急増していることがわかった。12年度は電力だけで前年比10.7%増、一昨年度比では29・9%と約3割も増えている。

経済産業省の推計によると、2012年度のエネルギー起源CO2排出量は12億700万t-CO2で、前年度比2・9%増だった。2010年度以降、3年連続で増加している。このうち電力分は12年度が4億8600万t-CO2で、前年比10・7%増、10年度比29.9%増と東電福島第一原発事故後に大きく伸びている。12年度までの京都議定書約束期間の目標(90年比6%削減)は、それまでの削減実績があるため、クリアできる見通しだが、今後、電力からのCO2削減にどう歯止めをかけるのかが焦点となる。

電力各社は「だからCO2排出量の少ない原発の再稼働を」と主張する。だが、原発再稼働を認めるには、徹底した安全性の確保が、内外から求められており、仮にそうした厳しい条件をクリアして、いくつかの原発の再稼働が認められたとしても、従来のように総発電量の10数%を原発に頼ることは現実的に難しいのが現状だ。

 

電力各社は、原発停止後の緊急避難的措置として旧式の石炭火力などを稼働させてきた。しかし、石炭火力への依存からの脱却は世界的な課題で、急激に激化する温暖化を抑制するうえでは日本の対応は全く逆行した形となっている。ポスト京都の国際交渉をにらんで、各国がCO2などの温室効果ガスの削減目標の競争に入っている中で、日本だけが排出量を増大させているわけだ。

 経済界などからは「原発事故があったから」と言い訳をする向きがあるが、いつまでも原発事故の「被害者意識」を説明に使うだけで、国際的な納得が得られる状況でもない。すでに事故以来2年半以上が経過している。先進国としての責務を果たすためにも、原発問題に的確に向き合うとともに、石炭火力抑制にカジを切る必要がある。さもなければ、ポスト京都の国際交渉で、日本の存在感はゼロになってしまう。

 振り返ると、欧米では、温室効果ガス削減対策の最初の段階で、発電所を対象としたC&T(排出検討り引き制度)を導入してきた。CO2排出量の多い電力セクターをまず規制するのが、もっとも合理的で、電力の低炭素化は当然の第1ステップとなっており、すでに次のステップに移動している。わが国においても、原発の動向を冷静に議論するとともに、緊急避難的な石炭火力発電所の増設対応から早急に脱却する必要がある。

 石炭火力を縮小することに伴うコストアップ分は、天然ガス発電の切り替えと、再生可能エネ発電固定価格買取制度(FIT)で、経済全体でカバーするようにする以外にない。再生エネ発電を普及し、天然ガスやCCSなどの新規技術分野の開発を加速させるためにも、欧米のように、電力に対象を絞ったたCO2排出量取引制度を早急に立ち上げ、市場原理に基づいたクレジット取引と、排出量の適正化を進める必要がある。

http://www.env.go.jp/