HOME |パリ協定目標達成でも、世界の海面は2100年までに52cm上昇。1.5℃目標と2℃目標では海面上昇で11cm、コストで年間1.4兆㌦の差。何も手を打たないと年27兆㌦損失。国際研究チームが推計(RIEF) |

パリ協定目標達成でも、世界の海面は2100年までに52cm上昇。1.5℃目標と2℃目標では海面上昇で11cm、コストで年間1.4兆㌦の差。何も手を打たないと年27兆㌦損失。国際研究チームが推計(RIEF)

2018-07-14 18:05:12

Seelevelrisingキャプチャ

 

    世界の気温上昇がパリ協定で目標とする1.5℃の場合と2℃の場合では、温暖化の進行による海面上昇で11cmの差が生じ、その適応コストは年間1兆4000億㌦(154兆円)の違いが生じる、との国際研究チームによる推計結果が出た。協定を無視して、十分な対策を講じなかった場合(BAU)、海面は2100年までに最大で1.8mも上昇し、洪水等による被害額は最大27兆㌦(約3000兆円)に達するという。

 

 調査は英国の国立海洋学センターのスベトラナ・ジェブレジェバ(S.Jevrejeva)氏ら英、独、デンマークの研究者による共同論文。学術サイトのEnvironmental Research Lettersに掲載された。

 

 それによると、パリ協定が温暖化の進行を防ぐための目標とする産業革命前からの世界の気温上昇を1.5℃~2℃に抑制する場合でも、2100年までに、それぞれ25cm~87cm(中位値52cm)、27cm~112cm(同63cm)へとそれぞれ上昇する。

 

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  両者の中位値の差となる11cmは、適応対策コストに換算すると、他の社会的適応対策が取られないと仮定した場合、年間1.4兆㌦となる。この数字だけでも驚きの額だ。だが、研究チームは、パリ協定を離脱したトランプ政権が目指すような特に対策をとらないビジネス・アズ・ユージュアル(BAU)のモデルも推計した。

 

 高温室効果ガス排出シナリオ(RCP8.5)の場合、世界の海面上昇は86cm(中位値)から180cm(最大値)に達し、それによって引き起こされる洪水や高潮対策、港湾、堤防、河川等の修復強化費用などの適応コストは2100年には年間14兆㌦~27兆㌦に跳ね上がる。

 

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 これらの年間コストは最大でGDPの2.8%まで上昇する。海面上昇コストの重荷は、国によって異なる。主に中国などの人口の多い中所得国では、GDPに占める比率は最大で8%近くにまで上昇する。これに対して、欧米等の高所得国では、かなりの程度、適応対策が行き渡っているので、BAUの場合でも中位値でGDPの2.5%、最大で5%程度にとどまる見通しだ。適応対策でも新興国・途上国対策が大きなカギを握ることになる。

 

 推計では、中位値からプラスマイナスにどれだけ振れるかは、海面上昇に大きな影響を及ぼすグリーンランドと南極海の海氷の溶融状況によって左右される。ただ、両要素とも、未確定の部分が多いのが実態だ。また適応対策の適否によって、海面上昇の脅威をある程度マネージすることも可能。さらに再エネ投資を早期に広めることで、将来の適応コストの伸びを抑える期待もある。

http://iopscience.iop.org/article/10.1088/1748-9326/aacc76/pdf