HOME8.温暖化・気候変動 |福島・いわき市で建設中の三菱商事パワーの世界最大の石炭ガス化複合発電(IGCC)、米国産石炭を使用。CO2排出量は従来火力より15%少ないが、天然ガスより多い。「クリーンコール」是非議論に(各紙) |

福島・いわき市で建設中の三菱商事パワーの世界最大の石炭ガス化複合発電(IGCC)、米国産石炭を使用。CO2排出量は従来火力より15%少ないが、天然ガスより多い。「クリーンコール」是非議論に(各紙)

2019-03-28 13:20:40

nakoso1キャプチャ

 

  三菱商事系の三菱商事パワーが福島復興プロジェクトとして福島県いわき市で開発中の世界最大の石炭ガス化複合発電(IGCC)設備で使用する燃料として、米国産の亜歴青炭を採用することがわかった。米国からの亜歴青炭の輸入は極めて限られており、勿来IGCCの導入は米石炭産業にとっての輸出需要を創出することになる。IGCCはCO2排出量が従来型の石炭火力より約15%少ないとされるが、LNG火力等よりは多く、新規石炭火力計画の見直しが相次ぐ中で、議論を呼びそうだ。

 

 (写真は、福島・いわき市で建設が進む勿来IGCCの発電プラント)

 

 米国石炭の使用については、日刊工業新聞が伝えた。建設中のIGCCは、「勿来(なこそ)IGCCパワー」で、出力543MW。クリーンコール技術とされるIGCCプラントとしては世界最大となる。IGCCは燃料となる石炭をガス化し、複合発電設備(コンバインドサイクル)と組み合わせることで、高効率での発電を実現する仕組み。超々臨界圧石炭火力(USC)よりも熱効率が高く、CO2排出量は従来型の石炭火力よりも15%削減できるため「クリーンコール発電」とされる。

 

 熱効率を示す「送電端効率」は、超臨界圧石炭火力(SC)が約39%、USCが約42%。これに対してIGCC(1400℃クラス)は約48%と高い。またCO2排出量だけでなく、発電後に排出される石炭灰や温排水量も従来型よりかなり大幅に削減される。

 

石炭火力発電の効率の推移
石炭火力発電の効率の推移

 

 今回、採用が明らかになった燃料炭の米国産亜歴青炭は、米国ワイオミング州パウダーリバー盆地のスプリングクリーク炭を導入するという。まず試運転用に20数万㌧を輸入し、来年9月の商用運転時には、米国産炭のほか複数の石炭を使用する計画だが、年間130万㌧使用する燃料炭のかなりの割合を米国炭で調達する予定という。

 

 米国炭の日本への輸出は2017年に700万㌧と多くはない。また輸出量の多くは原料炭で、発電用は同年で230万㌧だった。今回、勿来IGCCが米国産の亜歴青炭の本格採用を決めたことで、同事業向け石炭輸出は、米国の1プロジェクト当たりの輸出量としては最大の規模になるという。

 

 また、勿来に続いて、2012年9月には、広野町で発電所を建設中の広野IGCCパワーも同じく米国産石炭を採用する可能性が高いとされる。福島原発停止後の福島県内の発電力は、米国産石炭が支える形となる。

 

 ただ、現在、米国西海岸に専用の石炭積出港がなく、ワイオミング州からカナダまで鉄道輸送している。今後、搬送量が増えることに伴うインフラ面の整備をどうするかが課題となってくる。

 

http://www.nakoso-igcc.co.jp/company/