HOME8.温暖化・気候変動 |【「磐梯朝日」発電所計画】地熱開発に賛否 国「再生エネ推進の鍵」 温泉業者「湯量減が心配」(福島民報) |

【「磐梯朝日」発電所計画】地熱開発に賛否 国「再生エネ推進の鍵」 温泉業者「湯量減が心配」(福島民報)

2012-04-04 12:40:40

fukushima0404_27
福島県内の磐梯朝日国立公園で出光興産などが検討している国内最大級の地熱発電所建設計画に関し、国側が再生可能エネルギー普及の「切り札」として推進の姿勢を強調する一方で、福島県内の温泉関係者には「湯量などに影響が出るのではないか」との不安が広がっている。関係する県内市町村は大規模プロジェクトの行方に注目している。

■潜在能力
 国は東京電力福島第一原発事故以降の厳しい電力需要を乗り切るとともに、地球温暖化対策を進めるため、安定した発電が可能な地熱発電の拡大を目指している。「福島県は地熱で大きな潜在能力がある。再生可能エネルギーを推進に向け重要な地域だ」。経済産業省資源エネルギー庁の担当者は力説する。

 

 県内での地熱発電所建設は民間企業と国が一体となって計画を進めている。国は今年になって相次ぎ規制緩和に踏み切った。温泉法に基づく都道府県の許認可手続きのガイドラインを策定し事業進展を後押ししたほか、国立・国定公園内で井戸を垂直に掘ることを一定条件の下で認めた。
 国は来週中にも、開発する民間企業と一緒に、県内の温泉関係者らに対する説明に入る考えで、「地元理解を得ることに全力を注ぎたい」と意気込む。
 温泉関係者からの発電所建設への反発について、国は「発電所で使う蒸気は温泉よりもかなり深い地点から取るため、温泉に影響が出ることは考えられない」としている。

■危機感募る
 「温泉は何百年も人の体と心を癒やしてきた。先祖が大切に守り、多くの人に愛されている温泉を維持していけるのか」。福島市高湯温泉で150年続く旅館、吾妻屋の五代目の遠藤淳一社長(高湯温泉観光協会長)は、発電所計画に危機感を募らせる。
 先月発足した「磐梯・吾妻・安達太良地熱開発対策委員会」の委員長を務める。地熱発電所の建設計画に「待った」を掛けるために県内の温泉関係者らでつくった組織だ。発電所建設には地中から蒸気を抜くための井戸を掘ることが必要。委員会は井戸によって湯量が激減したり、温度が下がったり、成分が変わったりするなどの影響を懸念している。
 「地熱発電所建設の影響が温泉にあったという報告を国内外で聞いている。国のやり方は『まず地熱ありき』のようで、性急すぎる」。遠藤さんは疑問を呈する。
 二本松市岳温泉の源泉から各旅館などに供給している「岳温泉管理」の大内正孝社長も「地中で何が起こるか分からない」と心配する。その上で「試掘をする前に、影響が出た場合の補償がしっかり示されなければ納得できない」と指摘した。

【背景】
 枝野幸男経済産業相は3月23日、本県の磐梯朝日国立公園を含む北海道や東北の計5カ所で地熱発電所の開発を優良事例として進める方針を示した。経産省は地熱発電の導入拡大に向け、今年度当初予算案に地表調査の補助事業費など150億円を計上。産業技術総合研究所の推計によると、国内には発電量2347万キロワットの地熱資源があり、原発約20基分に相当するが、8割以上は自然公園内という。

 http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2012/04/post_3594.html