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タイタニックの時代より氷山は増えた?(National Geographic)
2012-04-09 15:17:21
100年前の1912年4月15日、沈むことはないと考えられていた大型客船タイタニック号が、北大西洋で氷山と接触して沈没した。この伝説の船が仮にいま航行したら、地球温暖化の影響で当時より多くの氷山に遭遇する可能性が高いと考えられている。「地球温暖化で氷山の数が増えるというのは意外と思われるかもしれない」と話すのは、ザ・ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)で気候適応のトップであるフランク・ローウェンスタイン(Frank Lowenstein)氏だ。
NASAゴダード宇宙科学研究所(GISS)によると、地球全体の平均気温は1880年から約0.8度上がっており、その3分の2は1975年以降に生じている。こうした大気と海洋の温度上昇によって、氷山形成のスピードが増しているのではないかとローウェンスタイン氏は主張する。
主にグリーンランドと南極大陸では、氷河や氷床の下で氷が解けると、その水で滑りやすくなった氷は海のほうへ向い、最終的に分離する。解ける氷が増えれば、この割合が増加する。
「WD-40(潤滑スプレー)がまかれたようなものだ」と、ローウェンスタイン氏は話している。「1つの氷河から1年間に海へ分離する氷が大量に増えているのだから、氷山は増えている可能性がある」。
また、暖かい大気は氷の表面に水がたまる原因になる。この水が割れ目に流れ込むと氷が不安定になり、ついには分離する。
◆巨大な氷
最近の計算によると、氷河や氷床から毎年1000億~2000億トンの氷が失われているとローウェンスタイン氏は言う。「10億トンは1立方キロメートルであり、巨大な氷だ」。現在の北大西洋はこうした巨大な氷塊の数々によって、タイタニックが航海した1912年より多くの氷山がある可能性が高い。
ミシガン大学アナーバー校の氷河学者ジェレミー・バシス(Jeremy Bassis)氏は、「タイタニックがいま同じ航路をたどれば、より多くの氷山に遭遇するだろう」と話す。
ただしTNCのローウェンスタイン氏によると、海洋の氷山は移動パターンが絶えず変化し位置と大きさの予測が不可能なため、タイタニックが1912年に実際に遭遇した氷山の数や、今ならどうなるかについて、専門家でも正確な数字はわからない。
それでも、氷河や氷床は世界的に縮小しており、その速度が増しているらしいことはわかっている。
◆地球温暖化と氷山の分離の相関性
ミシガン大学のバシス氏は、氷山の増加が温暖化のせいなのかはわからないという。「簡単に答えると、本当のところは誰もわかっていない。氷山の分離は、予測がじつに難しいもののひとつなのだ」とバシス氏は話す。
それでも地域単位では、温暖化が氷山誕生の一因になっている例はいくつかある。
例えばグリーンランドでは、ヤコブスハブン氷河が崩壊を始めたその時に、暖かい海流が氷河に浸透していたという証拠がある。この氷河の海に突き出した氷舌は、2003年に完全に消失したとバシス氏は話す。
また、約1万年間にわたり安定していた南極大陸のラーセンB棚氷が、2002年にわずか6週間で崩壊したが、これはおそらく割れ目への水の浸透によるものだとバシス氏は述べる。ラーセンB棚氷は、世界でも急速に温暖化が進んでいる地域にある。
「これほど急だとは誰も予測していなかった」とバシス氏は話す。「過去10年程度について、南極でもグリーンランドでも全体として氷床が海へ失われているということは、観測結果から疑念の余地はないようだ。とても急激な変化がみられている」。
しかし、「具体的な変化を世界的な気候変動に結びつけるのは難しい」。
◆極端な現象に備える
地球温暖化によって森林火災や海岸侵食などの「極端な現象」が近く増加すると専門家は予測しており、影響はすでにどこかに生じているかもしれないとTNCのローウェンスタイン氏は話している。
しかし、森林火災なら木を間引いて火災の進行を遅らせる、海岸侵食ならカキ養殖場を設置して侵食を食い止めるなど、対応策はあるという。「タイタニックの悲劇をうけて人々は習慣を変えた」とローウェンスタイン氏は言う。例えば、クルーズ船の救命ボートの数が増えた。
新しい習慣の採用は、「気候変動の時代において取り組むべきことのひとつだ」とローウェンスタイン氏は話している。
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20120405002&expand#title
NASAゴダード宇宙科学研究所(GISS)によると、地球全体の平均気温は1880年から約0.8度上がっており、その3分の2は1975年以降に生じている。こうした大気と海洋の温度上昇によって、氷山形成のスピードが増しているのではないかとローウェンスタイン氏は主張する。
主にグリーンランドと南極大陸では、氷河や氷床の下で氷が解けると、その水で滑りやすくなった氷は海のほうへ向い、最終的に分離する。解ける氷が増えれば、この割合が増加する。
「WD-40(潤滑スプレー)がまかれたようなものだ」と、ローウェンスタイン氏は話している。「1つの氷河から1年間に海へ分離する氷が大量に増えているのだから、氷山は増えている可能性がある」。
また、暖かい大気は氷の表面に水がたまる原因になる。この水が割れ目に流れ込むと氷が不安定になり、ついには分離する。
◆巨大な氷
最近の計算によると、氷河や氷床から毎年1000億~2000億トンの氷が失われているとローウェンスタイン氏は言う。「10億トンは1立方キロメートルであり、巨大な氷だ」。現在の北大西洋はこうした巨大な氷塊の数々によって、タイタニックが航海した1912年より多くの氷山がある可能性が高い。
ミシガン大学アナーバー校の氷河学者ジェレミー・バシス(Jeremy Bassis)氏は、「タイタニックがいま同じ航路をたどれば、より多くの氷山に遭遇するだろう」と話す。
ただしTNCのローウェンスタイン氏によると、海洋の氷山は移動パターンが絶えず変化し位置と大きさの予測が不可能なため、タイタニックが1912年に実際に遭遇した氷山の数や、今ならどうなるかについて、専門家でも正確な数字はわからない。
それでも、氷河や氷床は世界的に縮小しており、その速度が増しているらしいことはわかっている。
◆地球温暖化と氷山の分離の相関性
ミシガン大学のバシス氏は、氷山の増加が温暖化のせいなのかはわからないという。「簡単に答えると、本当のところは誰もわかっていない。氷山の分離は、予測がじつに難しいもののひとつなのだ」とバシス氏は話す。
それでも地域単位では、温暖化が氷山誕生の一因になっている例はいくつかある。
例えばグリーンランドでは、ヤコブスハブン氷河が崩壊を始めたその時に、暖かい海流が氷河に浸透していたという証拠がある。この氷河の海に突き出した氷舌は、2003年に完全に消失したとバシス氏は話す。
また、約1万年間にわたり安定していた南極大陸のラーセンB棚氷が、2002年にわずか6週間で崩壊したが、これはおそらく割れ目への水の浸透によるものだとバシス氏は述べる。ラーセンB棚氷は、世界でも急速に温暖化が進んでいる地域にある。
「これほど急だとは誰も予測していなかった」とバシス氏は話す。「過去10年程度について、南極でもグリーンランドでも全体として氷床が海へ失われているということは、観測結果から疑念の余地はないようだ。とても急激な変化がみられている」。
しかし、「具体的な変化を世界的な気候変動に結びつけるのは難しい」。
◆極端な現象に備える
地球温暖化によって森林火災や海岸侵食などの「極端な現象」が近く増加すると専門家は予測しており、影響はすでにどこかに生じているかもしれないとTNCのローウェンスタイン氏は話している。
しかし、森林火災なら木を間引いて火災の進行を遅らせる、海岸侵食ならカキ養殖場を設置して侵食を食い止めるなど、対応策はあるという。「タイタニックの悲劇をうけて人々は習慣を変えた」とローウェンスタイン氏は言う。例えば、クルーズ船の救命ボートの数が増えた。
新しい習慣の採用は、「気候変動の時代において取り組むべきことのひとつだ」とローウェンスタイン氏は話している。
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20120405002&expand#title