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ロシアのモスクワ等、1月の気温は過去最高の「暖かさ」。平均気温も初めて零度を上回る。「消えた冬将軍」、市民には「過ごし易い冬」も反動の懸念も(RIEF)

2020-02-04 00:14:20

russia1キャプチャ

 

 日本の太平洋側では冬とは思えぬ暖かい日が続くが、ロシアのモスクワやペテルスブルグ等の主要都市も、1月の気温が過去もっとも高かった。雪のほとんどないモスクワでは1月平均温度より9.3℃高く、これまでの最高記録を1.5℃も上回った。市民にとって過ごしやすかったが、「ロシアの冬将軍」が消えてしまった影響が今後の気候をどう変貌させるか、不安感も高まっているようだ。

 

 (写真は、雪の無い1月のモスクワ市内)

 

 ロシア水文気象環境監視局(Rosgidromet)の観測によると、モスクワやペテルスブルグのほか、欧州地域のロシアの約70の都市での気温はこれまでの1月の平均気温を1.6℃上回った。モスクワの同月の平均気温は初めて0℃を上回った。平年より9.3℃高く、同市で気温観測が始まった1879年以来でもっとも気温が高い1月となった。

 

 雪の多いモスクワの1月。平年の積雪量は、平均32cmだが、今年は4分の1以下の7cm。雪が降っても暖かいのですぐに溶けて水溜まりになる日がほとんどだった。モスクワとペテルスブルグの1月の平均気温が0℃を超えたのも、気象観測が始まって以来のこと。気象専門家は「1月は冬ではなかった」と評価している。

 

モスクっこがマスクをするのは、寒さ対策ではなく、コロナウィルス対策のようだ
モスクっこがマスクをするのは、寒さ対策ではなく、コロナウィルス対策のようだ

 

 また2019年はロシア全体として、過去最高の気温が続いた年となった。毎年のように高い気温が続く要因は、寒気をもたらすシベリア気団が弱く、大西洋からの前線の影響が大きいという。ロシア水文気象環境監視局の科学者、Roman Vilfand氏は「ロシアの天気はこれまでと、異なった気温のレベルにジャンプしたのは明らか。非常に珍しい現象」と指摘している。

 

 「ロシアの冬将軍」はシベリア気団によって猛威を奮ってきた。だが、ここ数年は、その気団の影響が弱く、冬の様相を一変させている。かつて、「冬将軍」の厳しさで、1812年のナポレオンのロシア侵攻も、1941年のドイツのヒトラーのソ連侵攻も、撃退された。冬将軍が消えたロシアの気候変動はどう展開するのだろうか。

 

 「寒くない冬」は穀物などの農業生産の収量アップのほか、石油・ガスなどのエネルギー生産の拡大を見込める。市民にとっても過ごし易いメリットがある。一方で、デメリットへの不安も漂う。ロシア特有の懸念として、広大な永久凍土が気温上昇とともに溶融し、地中のメタンの発生や、地盤沈下が進む可能性等が指摘される。

 

 また昨年夏はシベリア地域で乾燥・干ばつの進行で森林火災が例年以上に広がった。気温変動による森林火災等は、現下のオーストラリアでの拡大のほか、毎年のように米カリフォルニアやブラジル・アマゾン等で起きている。

 

https://www.themoscowtimes.com/2020/02/03/russia-experiences-hottest-january-in-recorded-history-a69136