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東京海上アセットマネジメント。自然関連分野の国内ベンチャー企業2社と連携。海洋や農業分野でのクレジット創出や将来のビジネス展開を目指す(RIEF)

2023-07-03 13:17:36

TMAMキャプチャ
 東京海上アセットマネジメントは、ブルーカーボン事業と農業カーボンクレジット事業の国内ベンチャー企業の2社と、ESG/サステナビリティ分野での新たな取り組みを展開すると発表した。昨年12月に「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」が採択されたことを受け、気候変動や生物多様性の損失への対応の必要性が高まっていることから、両社の活動を共同研究の形で支援するとともに、GBFが掲げる「30by30」の達成に向けて海洋や農業等の分野でのビジネス活動への展開も視野に見据えている。

 

 
 連携するのは、独自の環境移送技術を活用したブルーカーボン等の開発を進めるイノカ社(東京)と、農業由来のカーボンクレジットの開発等を手がけるフェイガー社(同)。

 

 東京海上AMでは、「両社とも国内で『顔の見える取組み』を実行し、地域創生、生物多様性保全、脱炭素の観点で特徴ある勝度を展開している点を評価した。一緒に連携することで、これら取組みを加速させたいという思いと、CSR的な取り組みとどまらず、金融機関が入る事で、サプライチェーン全体で取り組みを進めることに貢献したい」としている。

 

 

  同社自体は、今回の連携を通じて、将来はクレジットをベースにしたファンド運用などの新たなビジネス展開のほか、クレジットの質の評価やオフセット項目なども踏まえた統合的なESG情報を盛り込んだ企業価値算出手法の実現等を目指したいとしている。

 

 

  イノカは、国内有数のサンゴ飼育技術を持つアクアリスト(水棲生物の飼育者)と、東京大学でAI研究を行っていたエンジニアが協働して、2019年に創業したベンチャー企業。飼育者の職人知にIoT・AI技術を組み合わせることで、任意の生態系を水槽内に再現する「環境移送技術」を開発している。同技術の活用で、GBFの「30by30」の取組みに連動したサンゴの保全や海藻の研究・育成等によるブルーカーボンを創出するとともに、陸上養殖等の事業展開も視野に入れている。

 

 

 フェイガーは、水田や牛のゲップから排出されるメタン等の回収や、バイオ炭等を使ったクレジット組成等を実用化しており、内外の農家に対する脱炭素取り組みを支援及びクレジット化を通じてビジネス展開を目指す日本初の農業クレジット系のスタートアップ企業。2023年度は国内の10都道府県、20地域、100農家以上を対象としたプロジェクト組成を進めているほか、2024年度は、タイやミャンマー等で海外プロジェクトを始める予定。

 

またイノカ社は海をベースにした教育事業も行っていることから、東京海上AMが所属する東京海上グループが推進する未来世代を中心に据えたESG/サステナビリティ教育の普及活動と連携させた展開も想定しているとしている。

 

 

 資産運用機関を含めた金融機関は、今後、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が公表した国際共通の気候・サステナビリティ情報開示基準に基づき、温室効果ガス(GHG)のScope3(financed emissions)の把握と公表を求められる流れにある。このため、投融資先の排出量削減を求める活動として、投資先に環境・社会面での改善を促すエンゲージメント活動が一般的取組になっている。

 

 

  同社はこうしたエンゲージメント活動をさらに進める考えだ。「一事業会社として、投資先に対話して行動を促すだけで、自社で何も行動をしない事はいいのかという点を、課題として認識している。積極的に(投融資先の)ESG活動に関与すべきとの判断から、今回のような取組みを通じて自ら社会課題の解決へ貢献し、その結果として自社のブランド・無形価値構築も目指していきたい」としている。