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三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)。投融資ポートフォリオのGHG排出量(financed emissions)は日本の排出量全体の17.5%。自動車等3セクターの中間目標追加(RIEF)

2024-04-02 01:28:02

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 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は1日、同グループの投融資ポートフォリオが抱える投融資先企業の温室効果ガス(GHG)排出量(financed emissions  : FE)は1億9600万㌧(2022年度)に達すると公表した。日本の国全体の排出量の17.5%を占める。国連のネットゼロ金融イニシアティブ(NZBA)によるセクター別中間削減目標について、新たに自動車、航空、石炭(採掘)の3セクターを設定、既存分を合わせ8セクターの目標を整備した。これにより、投融資額の少ない農業等を除き、NZBAが定めるセクター別中間目標設定を完了したとしている。目標達成に向け、投融資先の脱炭素化を促進するためのサステナブルファイナンスの実行額 (2019~2030 年累計)目標も、これまでの35兆円から100兆円へ引き上げた。

 

 MUFGは同日公表した「MUFG気候レポート」において、これらのデータを示した。注目されたのが、金融機関のスコープ3(financed emissions  : FE)である投融資先企業のGHG排出量(スコープ1~2)が1億9600万㌧(196MtCO2e)という規模になる点だ。前年度(21年度)は17セクターの合計だったが、22 年度はその他の19セクターを加え、計測対象を全セクター に拡大した。

 

MUFGのfinanced emissionsの概要
MUFGの2022年度のfinanced emissionsの概要

 

 投融資先企業の取引先排出量(スコープ3)を加えると、実に8億1900万㌧に拡大する。取引先のスコープ3排出量は国内だけでなく、グローバル取引による海外でのサプライチェーン等の排出量も含まれる。対象となる投融資は、銀行のコーポレートファイナンス、プロジェクトファイナンス、航空機ファイナンス、シップファイナンス、不動産ノンリコースローンとし、ソブリンと業種分類不明な先は除外した。

 

 22年度のFE(スコープ1~2)が最も多いセクターは電力部門(7300万㌧)、次いで石油・ガス(3600万㌧)、金属・鉱業(2000万㌧)。同年度に追加されたセクター(15MtCO2e)を除いた前年度と同じ対象セクターでの比較では、18MtCO2e減少した。だが、22年度は対象セクターを増やしたほか、企業の開示拡充やデータの精緻化などにより排出量は増加傾向という。ただ、バリューチェーン内での排出重複も多い。

 

 MUFGのFEをスコープ3まで拡大すると、石油・ガスセクター(1億7100万㌧)が最も多く、次いで電力(1億400万㌧)、自動車(7700万㌧)と続く。これらのセクターへのMUFGの投融資額では不動産セクターがFEは300万㌧と少ないが、不動産価格が高いことから740億㌦(約11兆1700億円)と最も多い。次いで自動車の590億㌦(約8兆9000億円)、電力の580億㌦(約8兆7500億円)、石油・ガスの480億㌦(約7兆2500億円)となる。

 

NZBAが定めるセクター別中間目標へのMUFGの対応状況
NZBAが定めるセクター別中間目標へのMUFGの対応状況

 

 MUFGは2021年6月にNZBAに加盟した。同イニシアティブでは、投融資ポートフォリオの2050年ネットゼロを共通ゴールとするほか、2030年あるいはそれ以前に中間目標の設定を求めている。中間目標は、加盟後18カ月以内に高排出セクターのうち主要な複数セクターの目標設定、36カ月以内に大部分の高排出セクターの目標設定を求めている。

 

 MUFGはこれまで電力、石油・ガスなど5セクターの中間目標を設定して「18カ月目標」を満たしており、今回の自動車、航空、石炭の3セクターの追加で、8セクターの目標を設定した。NZBAが求める残りの農業、セメント、アルミニウムについては、MUFGの投融資額が限られているとして目標設定しないとの方針を示し、NZBAの「36カ月以内目標」を完了したとしている。

 

 新たに中間目標を設定した自動車セクターについては、排出原単位(2021年:169gCO2/vkm)を30年に「23~46%減」とする。航空については、同じく排出原単位(21年:130g CO2/RPK)を、ほぼ半減の71gCO2/RPKとする設定だ。石炭(採掘)については、2022年度の与信残高(OECD諸国約30億円、非OECD諸国約120億円)を、OECD諸国については30年にゼロ、非OECD諸国は40年にゼロと設定した。

 

 各セクターの企業にGHG排出量の削減を促すため、顧客企業の脱炭素家への移行状況を評価する「トランジション評価フレームワーク」と「案件検討プロセス」を導入している。前者のフレームワークは、中間目標を設定した高排出セクターの企業を、その削減目標、ガバナンス、排出実績等から「2050年ネットゼロ達成が確実」な高水準から「ネットゼロ目標がない」という最低水準までの6分類で評価し、その分類に応じてエンゲージメントを展開する仕組みだ。MUFGは2022年から2023年にかけて、トランジションへの企業の取り組みが増え、同評価の改善割合が増えたとしている。

 

 後者はセクター・企業ごとに設定す環境・社会ポリシーフレームワークの適用や、企業のトランジション性評価のための「トランジション・スクリーニング」の実施、インフラ事業等の場合は「赤道原則」に基づく対応をし、各企業の気候変動リスクの判定等を実施するとしている。

https://www.mufg.jp/dam/pressrelease/2024/pdf/news-20240401-001_ja.pdf

https://www.mufg.jp/dam/pressrelease/2024/pdf/news-20240401-002_ja.pdf

https://www.mufg.jp/dam/csr/report/progress/climate2024_ja.pdf