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福島・いわき市の「勿来IGCCパワー」の石炭ガス化複合発電設備が本格稼働。CO2排出量は従来より約15%削減。経産省は石炭火力発電の「生き残り手段」と位置付け(RIEF)

2021-04-20 17:24:07

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 三菱重工グループの三菱パワーを中心とする企業連合は19日、福島県いわき市で進めてきた石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)事業が完成したと発表した。IGCCは世界最新鋭の石炭ガス化技術を活用し、CO2の排出量を従来の石炭火力より約15%削減できる。経済産業省はこれまで推進してきた超々臨界圧石炭火力発電(USC)に代わる石炭火力発電の「生き残り手段」として推進していく方針のようだ。

 (写真は、本格稼働に移行した「勿来IGCC発電所」の全景)

 三菱重工グループの、三菱パワー、三菱重工エンジニアリング、三菱電機、三菱パワー環境ソリューションの4社が共同開発を続けてきた。設備は、三菱重工、三菱電機、東京電力HD、常磐共同火力等で構成する「勿来IGCCパワー合同会社」が16日から運転を始めている。

 IGCCの仕組みは、まず、石炭を高温高圧のガス化炉でガス化し、硫黄、煤じんなどを分離・除去して精製したガスを燃料としてガスタービンを駆動させる。その燃焼排ガスを排熱回収ボイラーに導き、発生した蒸気を利用して運転する蒸気タービンを組み合わせる。この組み合わせによる高効率のコンバインドサイクル方式で発電する。

 旧IGCCの実証機である勿来10号機の実証成果を踏まえ、出力を約2倍の52万5000kWに拡大、世界最大規模の商用IGCCとして完成させた。国内で開発された空気吹きIGCCでは初めての大型商用機。ガスタービンの燃焼温度の向上で発電効率は48%で、USCに比べてもCO2排出量は約15%削減できる。発電効率で天然ガス火力に接近する。

 また石炭をガス化するため、従来は使えなかった低品位の石炭も燃料にできる。このため、発電コストを低く抑えられるとしている。石炭灰が溶けてガラス状になったスラグ(鉱さい)は、セメントの原材料や路盤材に再利用する。勿来GCCで使用する石炭は米国産の輸入亜歴青炭とされる。https://rief-jp.org/ct8/88458

 

 IGCCにカーボン回収貯留事業(CCS)を加えた石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)の実証事業も、中国電力とJパワーによって「大崎クールジェン(広島県)実証事業」として進められている。IGFCの場合は、CO2を完全回収する前提だが、技術の達成度と、コスト面が最大の課題となっている。https://rief-jp.org/ct4/89192

 

 稼働した勿来IGCC発電所は、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの福島県の経済復興と雇用創出を目的手として、2017年4月に本格着工していた。当初は2020月9月の運転開始予定だったが、設備の調整が難航して遅れていた。

 

 事業を運営する合同会社は別途、広野町にも同規模のIGCC発電所を建設中。両方を合わせて建設最盛期の昨年2月には1日当たり最大約2700人の雇用を実現した。両事業による福島県への経済波及効果は、環境影響評価着手から運用を含めた数十年間で1基当たり800億円とされている。

https://power.mhi.com/jp/news/20210419.html