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再エネ電力の「自然電力」(福岡)、電力小売り市場から撤退。卸売価格の高騰継続と、エネルギー市場の先行き見通し難で、価格維持できず。新電力の撤退相次ぐ(RIEF)

2022-10-05 22:49:44

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 自然電力(福岡市)は4日、提供する再生可能エネルギー中心の電力小売り事業からの撤退を発表した。電力卸売市場の価格高騰が続く等の市場環境の悪化から、これまでの電力販売価格での提供では難しいと判断した。同社はドイツの「Jiwi(ユーイ)」と連携して、日本市場での再エネ電力普及を推進してきただけに、小売り事業からの撤退は日本の電力市場の構造的変貌を示すものといえそうだ。

 

 自然電力は2011年の設立。自ら太陽光発電等の再エネ発電所を開発、運用しながら、小売り、法人向け等の販売事業も展開してきた。小売事業については、17年から実施してきた。ドイツで再エネの開発から販売まで手掛けるJuwiと連携し、海外のノウハウも取り入れて全国的に事業展開を続けてきた。

 

 しかし昨年10月ころからの電力卸売市場の価格高騰に加え、最近の国際エネルギー市場の混乱の収束見通しがつかないことから、「これまでのような価格帯・付加価値のまま提供し続けることは困難であるという結論に至った」と説明している。

 

 すでに今年4月には、家庭や企業向けの電力販売の新規受付を停止していた。現在、電力を販売している家庭や企業などの顧客に対しては、11月30日まで販売を続けるとしている。それ以降については顧客自身が他の電力会社へ契約を切り替えることになる。

 

 同社は「これからは、世界中で再エネによる電源がまだまだ不足している現状と、これまで培った自社(自グループ)の電源開発力に鑑み、国内外で再エネ発電所をつくり、増やしていく活動に集中したい」とコメントしている。

 

 昨年来の電力卸売市場の高騰の影響で、同社以外の電力小売事業でも事業からの撤退や廃業などが相次いでいる。帝国データバンクによると、昨年4月時点で706社あった新電力会社(登録小売電気事業者)は今年6月8日時点で1割以上の104社が倒産、廃業、撤退等に追い込まれている。3月末には31社だったのが、2カ月ほどで3倍超に増えている。

 

新電力会社の事業撤退動向(帝国データバンク調べ)
新電力会社の事業撤退動向(帝国データバンク調べ)

 

 このうち電力販売事業からの撤退は16社、倒産・廃業は19社となっている。6月以降、件数はさらに増加しているとみられる。

 

 市場環境の悪化が好転しない限り、卸売電力市場に頼らない自前の発電設備を備えた小売り事業者でないと、販売価格を維持できない状況は打開できない。小売市場からの新電力事業者の相次ぐ撤退によって、同市場は結局、既存電力事業者の寡占市場に戻っているといえる。

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