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東京ガス。「曰くつき」の福島沖で、浮体式洋上風力発電事業を展開へ。最大出力3万kWの発電、2027年の稼働目指す。設置場所は国産機による国の実証事業が”失敗”した海域(RIEF)

2023-02-04 00:17:41

PPo001キャプチャ

 

 東京ガスは3日、福島沖で浮体式洋上風力発電事業の検討に乗り出すと発表した。同社が出資している欧州の浮体式洋上風力発電の専門会社と連携し、最大出力3万kWの発電設備を建設、2027年の稼働を目指すとしている。建設する海域は、福島県楢葉町と富岡町沖で、東京電力福島第一原発事故からの復興の象徴として合計約600億円を投じて経済産業省が民間のコンソーシアムと実証実験を進めたが、採算が見込めず、建設した設備を全撤去した場所で知られる。東ガスは、同事業からの実証データを活用するとしているが、事業化が実るかが注目される。

 

 (写真は、導入するプリンシプル・パワー社の浮体式洋上風力発電設備)

 

 事業は福島県の地場電力会社である信夫山福島電力と共同実施の形で進める。事業名は「福島県楢葉町・富岡町沖浮体式洋上風力事業」。最大出力1万5000kW級の風力発電機を2基導入する計画だ。東ガスはすでに環境アセスメントに取り組み、3日付で環境影響評価方法書を経済産業相に届け出た。

 

 同海域では2012年に経産省が主導して「福島浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」を実施した経緯がある。同事業には丸紅がプロジェクトインテグレーター、東京大学がテクニカルアドバイザーとなり、三菱重工業、ジャパンマリンユナイテッド、三井造船、新日鐵住金、日立製作所、古河電気工業、清水建設、みずほ情報総研の各社がコンソーシアムを構成し、三菱重工、日立製作所、三井造船の3社が製造した浮体式洋上風力発電設備の実証実験を行った。

 

 

 

 しかし、いずれも一般的な商用化の目安とされる稼働率30~35%以上を確保できず、国の予算が終了するともに全基撤退した。今回は、国産風力発電の代わりに、プリンシプル・パワー社の風車を活用することで、事業化を目指すことになる。東ガス等では、これまでの国の実証実験によるデータを活用できるため、事業実施に伴う環境影響等も比較的少ないとしている。https://rief-jp.org/ct5/109169

 

 風況は好条件下で風速6.5m/s以上を得られるとしている。福島沖では大洗―苫小牧、名古屋―仙台のフェリー航路があるが、沖合のため航行に支障は生じないとしている。導入するプリンシプル・パワー社の浮体式技術は、風車が安定しやすい「セミサブ」式という技術に基づき、欧州のポルトガルやスペインでの運転実績がある。

 

浮体式洋上風力発電設備の設置予定海域
浮体式洋上風力発電設備の設置予定海域=環境アセスメント方法書より

 

 東京ガスは2020年5月にプリンシプル・パワー社に出資して主要株主の一社となっている。今回の福島沖での事業では、同社の技術に加えて、国産風力発電の「失敗」の経験を生かせるかどうかがカギとなる。

 

  想定通りの発電が得られると、年間約2万世帯が消費する電力相当分を発電できる。発電した電力は全量を固定価格買取制度(FIT)での買取対象とする。浮体式洋上風力発電は、海底が一定の深さのある海域でも設置できることから、将来は日本の洋上風力発電で主流になるとの期待がある。

https://www.tokyo-gas.co.jp/news/press/20230203-02.html

https://www.principlepower.com/