HOME10.電力・エネルギー |新電力「ウエスト電力」。ロシアのウクライナ侵攻での電力価格高騰を理由とした同社の一方的契約解除は違法として提訴した大牟田市への損害賠償全額支払いの判決。福岡地裁久留米支部(RIEF) |

新電力「ウエスト電力」。ロシアのウクライナ侵攻での電力価格高騰を理由とした同社の一方的契約解除は違法として提訴した大牟田市への損害賠償全額支払いの判決。福岡地裁久留米支部(RIEF)

2023-05-15 17:01:02

NHK0002キャプチャ

 

 各紙の報道によると、事業廃止を決めている新電力「ウエスト電力」(東京)に対して、同社の事業廃止によって電気料金の負担が増えたとして、福岡県大牟田市が約5420万円の損害賠償を求めていた訴訟で、福岡地裁久留米支部(立川毅裁判長)は、同市の訴えを認め、ウエスト電力に対し市の請求通り全額の支払いを命じる判決を出した。

 

 判決は12日付。報道によると、同市は2021年10月~22年9月にかけて、市庁舎や学校などへの電力供給契約を同社と結んだ。しかし、同社はロシアのウクライナ侵略による卸売電力価格の高騰などを理由に、22年3月に事業からの撤退を表明した。

  このため同市は、22年4月末で同社との契約を解除した後、同5月以降、九州電力送配電から割高な料金で電力を購入する「最終保障供給」の利用を余儀なくされた。このため、ウエスト電力の都合で電気料金の負担増を強いられたとして、負担増分の支払いを求めていた。

 裁判では、ウエスト電力が経営悪化要因として指摘するロシアのウクライナ侵攻等の理由が、不可抗力に該当するかどうかが争点となった。ウエスト電力は「ロシアの侵攻で世界のエネルギー市場に混乱が生じた。ウクライナへの軍事侵攻は契約時には考慮できず、不可抗力に当たる」と主張した。

 これに対して市側は「侵攻による不可抗力は交通が遮断され、物品輸送が不可能になるといった直接的な影響を想定するものと解釈され、今回のケースには該当しない」等と反論していた。

 判決で立川裁判長は「会社(ウエスト電力)が、同市と協議をすることなく、契約の解除を一方的に通告しており、そのような解除は有効ではない」と市側の訴えを認めたうえで、「ロシアによるウクライナ侵攻などの事実は統制が困難だとしても、電力仕入れ価格の変動の可能性があることは契約時に考慮でき、このリスクは会社が負担すべきだ」と説明した。

 判決後、大牟田市の関好孝市長は「市が求めていた損害賠償請求額の全額が認められ、妥当な判決だと思っている。ウエスト電力には、判決にそって速やかに対応していただくよう求めていく」とした。

 ウエスト社はウエストホールディングス(広島市の連結子会社で、2016年の電力小売自由化により電力小売市場に参入した。今年4月に解散を決議し、現在、債務超過のため東京地裁に特別清算手続きを進めている。判決に対し、親会社のウエストホールディングスは「控訴せず、清算手続きに入る」としているという。

 ウエスト電力を巡っては、宮崎県日向市や鹿児島県大崎町、大阪府富田林市も損害賠償を求めて提訴している。

https://www3.nhk.or.jp/fukuoka-news/20230512/5010020250.html

https://mainichi.jp/articles/20230512/k00/00m/040/279000c