HOME10.電力・エネルギー |JERAの愛知・武豊火力発電所で爆発・火災事故。超々臨界圧火力発電(USC)にバイオマス混焼方式。バイオマスが火災要因の可能性。JERAは1年半前に茨城県でもバイオマス火災発生(各紙) |

JERAの愛知・武豊火力発電所で爆発・火災事故。超々臨界圧火力発電(USC)にバイオマス混焼方式。バイオマスが火災要因の可能性。JERAは1年半前に茨城県でもバイオマス火災発生(各紙)

2024-01-31 22:14:57

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 日本で最大のCO2排出源である電力会社「JERA」の愛知県武豊町の武豊火力発電所で、31日午後3時10分ごろ、爆発が起き、火災が発生した。発電所は同3時半ごろに緊急停止した。火災は夜になっても続いている模様。爆発・火災を起こした発電所は、1基当たりの出力が国内最大級の107万kWで国内最大級の石炭火力発電。石炭火力としてはCO2排出量が少ない超々臨界圧火力発電(USC)で、CO2削減のために、石炭と木質バイオマスの混焼燃料を使っている。輸入した木質バイオマスによる火災事故はここ2~3年、各地の発電所で起きており、JERAでも1年半前に別の発電所でバイオマス火災を起こしている。

 各紙によると、爆発・火災を起こしたのは、武豊火力発電所の5号機。石炭と木質バイオマスを混焼していた。同発電所はすべて石炭火力発電で、1966年に1号機、1972年に2号機から4号機が運転を開始し、中部地域に対して、電力を供給してきた。しかし、設備の老朽化に伴い、1~4号機はすでに廃止されている。火災を起こした5号機は環境への配慮として、燃料に従来からの石炭に加え、木質バイオマスを混焼する新たな設備を導入し、2022年8月から運転していた。

 同発電所の年間発電量は一般家庭約240万世帯分に相当する。火災は、発電所建物の13階部分にあるボイラー施設から煙が出ているほか、石炭等の燃料を運ぶためのコンベヤーでも燃えているという。現場には、消防車両14台が出動し、消火活動に当たっているが、同日夜に入っても火災は鎮火していない模様。

 火災の原因はまだわかっていない。だが、石炭と混焼していた木質ペレット等のバイオマス燃料は、火災を起し易いことで知られている。昨年3月には関西電力の京都府舞鶴市にある舞鶴発電所で、木質ペレットなどを貯蔵する施設「バイオマスサイロ」の周辺で火災が発生、鎮火に約10時間半かかった。同年正月に、大阪ガスの千葉・袖ケ浦バイオマス発電所の燃料サイトから発生した火災は、鎮火するまで実に、4カ月以上を要した。https://rief-jp.org/ct10/133551?ctid=

 JERA自体、2022年9月に茨城県東海村の常陸那珂火力発電構内のバイオマス受入施設(ホッパー建屋)から火災が発生。約7時間半後に鎮火する事故を起こしているほか、別途、煙を出すボヤも起こしている。同火力は1号機が2003年、2号機が2013年に稼働した。いずれも発電所のタイプはUSCで、出力100万kWの大型火力発電。CO2削減対策として、2017年6月からバイオマスを混焼し、1号機は石炭の発熱量に対して3%、2号機は同4.5%の混焼率と発表していた。
石炭とバイオマスの混焼燃料を運ぶベルトコンベアーの火災状況=NHKより
石炭とバイオマスの混焼燃料を運ぶコンベアーの火災状況=NHKより
 木質ペレット等のバイオマス燃料は、素材が木質であることから燃えやすい性質を持っているうえに、ペレット状なのでいったん燃え出すと、燃料全体の温度が上昇して鎮火が容易ではない特徴を持つ。特に輸入モノについては、国内の輸入審査が甘いことから、不純物を含んだ質の悪いバイオマス燃料を「掴まされる」ケースも起きている。https://rief-jp.org/ct10/129368?ctid=

 

 木質ペレット等のバイオマスナム燃料は、経済産業省の固定価格買取制度(FIT)で使用燃料ごとに発電電力の買い上げ価格が設定されており、2022年に発覚したベトナムのバイオマス燃料輸出業者の不正では、FITにより年間100億~160億円前後のバイオマス電力事業者への「過払い」が発生していた可能性が指摘された。だが、経産省は十分な調査をしないまま済ませてきた。https://rief-jp.org/ct5/129862?ctid=
 CO2削減促進のために導入されるバイオマス混焼だが、こうした品質の問題に加え、火災を起こすとCO2排出量の削減どころか、大量のCO2を排出することになる。これまで火災を発生させた電力会社は複数存在するが、いずれも、火災によるCO2排出量増大を公表していない。
 JERAは東京電力ホールディングスの子会社と中部電力の「火力発電・調達部門」が統合した合弁会社で、両社の火力発電を合算したことから、CO2排出量は国内で最も多い企業として知られる。

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