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チッソ系のJNC、汚染水の放射性セシウムを短時間で除去する新技術開発 (FGW)

2012-08-27 22:47:03

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チッソの事業子会社であるJNC(本社:東京都千代田区、社長:森田美智男)は、焼却灰の放射能セシウムの洗浄汚染水を対象とし、短時間・低コスト処理が可能になる技術を開発した、と発表した。現時点では研究開発段階だが、早期に実用化する方針という。

 現在、東日本各地のゴミ焼却場では、除染廃棄物をはじめ草木や一般ゴミなどの焼却灰から微量ながら放射性セシウムが検出されており、その効率的な除去・回収技術の開発が求められている。同社では、今回開発した技術を早急に、セシウム除去に活用したいとしている。

 

 同社はこれまで、海水を含む放射性セシウム汚染水処理のため、セシウム(安定同位体)の除去・回収技術を確立してきた(プロセス簡略図を以下に図示)。しかし、現在、放射性セシウムは生活域周辺の水にはほとんど含有されておらず、大半は東日本各地に拡散し、地域の土壌と森林などの植物に吸着・循環している。さらに、一般廃棄物や下水道汚泥の焼却灰などにも含有されていることが確認されている。

 

今回開発した技術は、焼却灰の洗浄汚染水から磁石を用いて、放射性セシウムの除去・回収を行うもの。セシウムを含む焼却灰洗浄後の汚染水に、吸着剤となる「フェロシアン化ナトリウム」を加えてセシウムと結合させる。さらに、鉄イオンを加えて反応させ、アルカリ水溶液を添加すると、磁性を帯びたセシウム結合体が生成される。この結合体を磁石を使って分離し、汚染水内のセシウムを除去・回収する仕組みだ。

従来のゼオライト等の固形吸着剤を使用する一般的なケースに比べて、非常に短い処理時間(数分以内)で、しかも1回だけの操作によって、放射性セシウムが検出限界以下となる特徴がある。そのため、処理に伴う廃棄物量も大幅に低減する。

 

また使用材料は、工業的に入手が容易なものであり、かつ、ろ過材、吸着剤の交換がまったく不要になる。このため、運用に伴うランニングコストが安価となり、大幅な処理費用の削減が可能になる。また磁気分離法を用いるため、密閉環境や遠隔操作による低被曝操作が実現できる、という。

同社では、今回の技術を活用して、大量の焼却灰洗浄水の処理を目的とし、工業的なセシウム除去プロセスの確立を目指している。また千葉県市原市の協力を得て、年内を目標にベンチスケールの技術開発を完成させる予定。

 http://www.jnc-corp.co.jp/news/12082788.html