HOME |追い詰められる、福島・双葉町123人の避難民 全国でただ1つ残る埼玉の避難所が閉鎖の危機(東洋経済) “絆”はどこに行った? |

追い詰められる、福島・双葉町123人の避難民 全国でただ1つ残る埼玉の避難所が閉鎖の危機(東洋経済) “絆”はどこに行った?

2013-05-27 16:52:05

双葉町の避難住民の生活はどうなるのか(町が5月21日に開催した、避難所住民との懇談会で)
双葉町の避難住民の生活はどうなるのか(町が5月21日に開催した、避難所住民との懇談会で)
双葉町の避難住民の生活はどうなるのか(町が5月21日に開催した、避難所住民との懇談会で)


原発事故から2年2カ月が過ぎた現在、全国でただひとつ残った避難所で暮らす住民が不安を募らせている。

福島県双葉町は6月17日付で、役場機能を埼玉県加須市内の旧埼玉県立騎西高校校舎から、福島県のいわき市内に設けた仮設の庁舎に移転する。その際に大きな問題として持ち上がっているのが、役場と“同居”している旧騎西高校内の避難所で暮らす住民の処遇だ。

5月21日現在、123人いる避難所住民の平均年齢は68歳で、「約25%が介護または生活上の支援が必要な人」(伊澤史朗町長)といわれている。現在、その多くは家族と一緒に生活していたり、旧騎西高校内の双葉町社会福祉協議会(社協)から入浴や洗濯の支援を受けているが、「今までのような役場や、社協による対応は難しくなる」と伊澤町長は話す。

 

食事の回数を減らして生活費を捻出


 

町役場の移転が目前に迫る中で、社協の移転についても「どうするかを詰めている最中」(大住宗重・健康福祉課長)。一部の職員が残るとしてもサポートが手薄になるのは避けられないことから、「埼玉県や地元の加須市に支援をお願いしている」(同氏)という。しかし、新たな住まいの確保を含め、具体的な支援の方策は何も決まっていない。

校舎内で暮らす住民の中には、生活に困窮する人も少なくない。

双葉町で理髪店を経営していた大井川繁光さん(74)もその一人だ。現在、避難所で共同生活を送る大井川さんは、手続きに時間がかかっていることから、東京電力から賠償金を受け取っていない。大井川さんは加須市内にNPO法人が開設した避難者のサロンで仕事を再開したが、孫の教育費がかさむため、「1日3食のところを2食に減らして教育資金を捻出している」(大井川さん)という。

高校の敷地内の生徒ホール2階で避難生活を続ける菅本章二さん(57)は、双葉町でコメ作りをしてきた。だが、原発事故で田畑を失ったうえ、要件を満たしていないために雇用保険の受給もできなかった。

それゆえ東電からの賠償金が命綱だったが、昨年6月までの賠償金が入金されたのは今年3月。手元にあるわずかな資金を節約するために食事を抜くこともしばしばあるという。その菅本さんは町が4月下旬に実施した避難所生活に関する意向確認のヒアリングの際に「最後まで避難所に残りたい」と答えている。「なぜ放射線量が高い福島県内に戻らなければならないのか」と菅本さんは疑問を投げかける。

いまだに多くの人が避難所生活を続けざるをえない理由として、県外避難者の生活再建の道が厳しく閉ざされていることがある。最長で20年の居住が保障され、新たな生活の基盤となる災害復興住宅(公営住宅)を県外に建設することについて、今も5万人以上が県外で避難生活を送っているにもかかわらず「何も決まっていない」(福島県生活拠点課の國分守主幹)。

5月21日に騎西高校の体育館で開催された町長と住民との懇談会で、住民から埼玉県内に災害復興住宅を建てて欲しいという要望書が約300人の署名とともに提出された。しかし伊澤町長は「中身をきちんと見て判断したい」と答えるにとどめた。県も「双葉町の考えも聞きながら、国や受け入れ自治体とも話をしていきたい」(前出の國分主幹)というものの、県が掲げる帰還政策と相矛盾することから、ハードルは高い。

安心して暮らせる場所もない


 

双葉町は「プライバシーや衛生面など生活環境に問題がある」として、遠くない将来に避難所自体を閉鎖したい考えだ。その際、「介護や生活上の支援が必要な人とそうでない人の間で退去の時期にタイムラグが生じることは仕方がない」(伊澤町長)としている。

だが、元気な住民が先に退去を迫られた場合、彼らに支えられていた高齢者の介護や身の回りの支援も困難になる恐れがある。介護サービスで加須市の協力を得られたとしても、順番待ちが続く特別養護老人ホームやグループホームに入居できる保障もない。

双葉町が懇談会で住民に示した「復興まちづくり計画(第1次)案」では「町民一人ひとりの生活再建の実現」を目指すとしている。

ここで言う「生活再建」とは、「町民の皆さんが、それぞれの希望する場所で、住居を確保し、仕事や生きがいなどの生活の糧を見つけて、日常の生活を取り戻すこと」と明記されている。しかし、避難所の住民はそれぞれの希望する場所に住むことすらできないのが実情だ。その窮状を知っていながら、国や福島県は何の手だても講じていない。

http://toyokeizai.net/articles/-/14079