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原子炉などの処分場未定 中程度汚染の「余裕深度処分」 事業者も決まらず(東京) 「出口なしの原子力政策」を象徴

2013-06-11 15:15:33

「余裕深度処分」の試験坑道の最深部にある空洞。奥は模擬廃棄物を入れた鉄筋コンクリートの構造物=青森県六ケ所村で(神代雅夫撮影)
「余裕深度処分」の試験坑道の最深部にある空洞。奥は模擬廃棄物を入れた鉄筋コンクリートの構造物=青森県六ケ所村で(神代雅夫撮影)
「余裕深度処分」の試験坑道の最深部にある空洞。奥は模擬廃棄物を入れた鉄筋コンクリートの構造物=青森県六ケ所村で(神代雅夫撮影)


原発の運転や廃炉作業で出る放射性廃棄物のうち、原子炉や制御棒など放射線量が中程度のものを地下に埋める処分場の選定作業が全く進んでいないことが分かった。これらの廃棄物は地下五十~百メートルに埋設する規定になっており、「余裕深度処分」と呼ばれるが、事業主体も決まっていない。今後本格化する廃炉作業の遅れが懸念される。 


 原発から出る使用済み核燃料は再処理され、残った放射性廃液はガラスで固めて三百メートル以深の地層に最終処分する。放射性廃棄物は、この「高レベル」と、それ以外の「低レベル」の二つに大きく分けられる。




 余裕深度処分の対象となる廃棄物は「低レベル」の範囲に含まれ、放射線量が比較的高めの部材だ。制御棒をはじめとする原子炉内の構造物や原子炉圧力容器、一定レベルの廃液などが当てはまる。




 余裕深度処分は、国の原子力委員会が一九九八年に示した「低レベル放射性廃棄物処分の基本的考え方について」という文書に初めて盛り込まれた。




 その後、電力全十社でつくる電気事業連合会(電事連)などで検討を開始。日本原燃が運営する核燃料サイクル施設(青森県六ケ所村)の敷地内で地盤などの調査に着手。二〇〇三年から長さ約一キロ、深さ約百メートルの試験坑道が掘られ、〇六年に完成した。〇七年から経済産業省資源エネルギー庁から委託を受けた研究機関が調査、研究を続けている。




 高レベル廃棄物は、原子力発電環境整備機構(NUMO(ニューモ))が候補地となる自治体を探しているが、現時点で応募はない。余裕深度処分の処分場の選定作業も放置されたままとなっている。




 現在、東海原発(茨城県東海村)、浜岡原発1、2号機(静岡県御前崎市)で廃炉作業が進行中だ。さらに、直下に活断層がある敦賀原発2号機(福井県敦賀市)や稼働四十年以上の老朽化原発が続々と廃炉になる可能性がある。




 電事連広報部は、余裕深度処分に関して「処分場の場所は現段階では決まっていない。各電力会社共通の課題として考えていくべきものと認識している」と話している。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013061102000100.html