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田中原子力規制委員長が 「東電原発、処理後の水放出は不可避」と東電擁護の見解。 では 海洋に漏出している高濃度汚染水を「規制委の責任」で制御せよ(FGW)

2013-07-25 00:34:11

「東電には優しく」--田中俊一原子力規制委委員長
「東電には優しく」--田中俊一原子力規制委委員長
「東電には優しく」--田中俊一原子力規制委委員長


各紙の報道によると、原子力規制委員会の田中俊一委員長は24日の記者会見で、東京電力福島第1原発で増え続ける汚染水対策として「処理して放出濃度基準以下になったものを放出するのは、たぶん避けて通れない」との見解を述べた。その一方で、原子炉建屋から高濃度汚染水が海洋に流出の可能性が高い問題については見解を示していない。高濃度汚染水のほうが大問題なのがわからないのか。

第1原発では原子炉建屋などに地下水が流れ込んで毎日約400トンの汚染水が増加しているという。東電は敷地内の貯留タンク等に保管しているが、保管スペースが限界に近づいていることから、建屋に流れ込む前の地下水をくみ上げて海に放出する「地下水バイパス」計画の準備や、汚染水から約60種類の放射性物質を取り除く「多核種除去設備(ALPS)」の試運転などの作業を進めている。

 

田中委員長の発言は、処理水の増加に追われて、物理的限界に直面しつつある東電への配慮といえる。徹底して放射性物質を除去した水であれば、規制委として海洋放出を容認することになるとの姿勢を示したことになる。規制委として「物わかりのいい」スタンスを示した。この田中委員長の論法は、逆に、放射能レベルの高い汚染水の海洋流出は断固として許せない、ということになる。ところが、同委員長は汚染水の流出問題で明確な指示を東電に示してきたように思われない。

東電は5月から汚染水が海に流出していた可能性を認めているが、そもそも、処理水や汚染水の放射能低減量の測定・調査はもちろん、地下水の構造等、規制委として第三者チェックは一切していない。すべて東電の報告を前提として話をしている。原発事故を起こし、賠償を多くの被災者から求められている”事故当事者”に、事故後の影響の広さ・深さの判断をゆだねているのである。こうしたことは「泥棒を警察官として雇っている」とまでは言わないとしても、客観性を欠く対応であることは間違いない。

田中委員長は、元日本原子力研究所副理事長を務めた「原発ムラ」の住人である。昨年の民主党政権下での就任時には、116の住民団体・NGOが「この決定は、国民の声を無視し、法の精神を踏みにじり、福島原発事故の教訓から何も学ばないものとして、強く抗議する」と非難を浴びた人である。

田中委員長は同じ記者会見の場で、原発の再稼働に向け電力4社が提出した安全審査の申請に不備が目立つ点について「以前に厳しく指摘したのに、電力会社は身に染みていないところがある」と苦言を呈した、と報道された。しかしその苦言とは実は、「許可を与えようとしているのだから、(規制委が)与えやすいような回答を出してこい」と言っているのではないか。規制委の責任が問われないよう、うまく申請を書いてこいといっているのではないか。

さらに既存メディアは、関西電力の高浜3、4号機(福井県)の申請内容に新規制基準に沿っていない部分があることを委員長が指摘して、「規制委はそんな甘ちゃんじゃない」と語ったことを、「強い口調でくぎを刺した」と書いている。だが、本当はそうではなく、「規制委が許可を出しにくくなって、困ることにならないよう、隙なく申請してこい」という注文に過ぎない。

のど元過ぎれば、ということか、参院選挙で自民党が大勝したことも受けて、原子力ムラの住人たちは、自分たちにとって都合のいいことを優先する生来の行動を、あからさまにとるようになってきた。