HOME |「世界原発産業レポート2013」 原発の利用さらに低下 世界全体で発電量の10%に低下 コスト上昇と事故リスク上昇 福島事故以前から利用下降局面へ(FGW) |

「世界原発産業レポート2013」 原発の利用さらに低下 世界全体で発電量の10%に低下 コスト上昇と事故リスク上昇 福島事故以前から利用下降局面へ(FGW)

2013-08-14 01:29:38

fukushima9eb0ace7cb87e6c28f0928b2a588efde-300x226
fukushima9eb0ace7cb87e6c28f0928b2a588efde-300x226近刊の世界原発産業レポート(World Nuclear Indsutry Status Report 2013)によると、東電福島原発事故から2年が経過し、その影響が世界の原発建設に及んでいることがわかった。2012年の世界での原発による発電量は7%削減され、過去最大だったその前年の11年の4%削減を上回った。レポートは世界的な原発低迷の主因は福島事故の以前から生じており、福島事故は一つの具体例に過ぎないと分析している。

レポートは各国の研究者が参加して、A Mycle Schneider Consulting Projectがまとめた。それによると、12年7月から今年7月初めまでの一年間における世界で稼働している原発は、31か国で427基。発電量は364ギガワット。この数字は10年前の2002年に来れば得て17基少なく、発電量も2010年より11ギガワット少ない。原発による年間発電量も12年は前年比7%減、06年比では12%減少している。原発発電の減少の要因の4分の3は日本での事故の影響が大きいが、他の16か国でも減少が起きているという。

こうした原発稼働の減少の結果、世界の発電に占める原発発電の比率は、1993年の17%をピークとして、12年には10%にまで下がっている。チェコを除くと、大半の国で原発稼働が減少しており、既存原発の稼働年数は増加し、世界の原発平均の稼働年数は13年半ばで平均28年に達している。このうち全体の45%にあたる約190基は稼働から30年以上が経過し、さらに44基は40年かそれ以上、経過している。つまり稼働終了期間が近づいている。

新規原発を建設中の国は14か国で、今年7月時点だと全体で66基が建設中。全体で63ギガワットの発電量。平均建設期間は8年だが、このうち9基は、20年以上も「建設中」との扱いになっている。IAEAはこのうち45基については公式の稼働日を把握していない。いずれも建設に伴う住民の反対や工事の不具合等によって大幅な遅れが生じている。建設中の原発の3分の2は(建設が大幅に遅れているものも含めて)3カ国に集中している。中国、インド、ロシアだ。

2012年に新規稼働した原発は3基、これに対して発電停止・廃炉となったのは倍の6基、今年は7月までで1基が稼働、4基が廃炉となっている(すべて米国)。廃炉となった4基のうち3基は、修理コストの上昇により、修理して再稼働するよりも廃炉の道を選んだ。日本でも関西電力など4電力会社が原子力安全委員会に原発再稼働申請を出しているが、レポートは市場の見方として、休止中の大半の原発の再稼働は見込めないとしている。

また新たに原発建設に取り組んでいるバングラデシュ、ベラルーシ、ヨルダン、リトアニア、ポーランド、サウジアラビア、ベトナムなどについても計画の遅れが生じていると指摘している。ロシアでも12年に建設を開始した原発について、今年5月に建設中止が起きている。新規建設は12年に6件で始まり、今年に入ってからも3件で起きている。うち2件は米国での新設で、35年ぶりの新設ということになる。ただ、米国の二基は80億㌦におよぶ連邦の融資保証等に支えられており、高まるコストを納税者や電力消費者に転嫁する点が問題、と指摘している。

(see www.WorldNuclearReport.org).

またレポートは福島原発事故の現状についても分析している。それによると、福島第一の1~3号機建屋の放射能濃度は5 mSv/h から 73 Sv/hに達しており、人間が直接作業ができる環境にはないことを指摘。日量360トンの汚染水が発生し、漏洩している点も問題視している。放射能汚染水についてはチェルノブイリ事故の2・5倍の放射能をすでに発生させているとしている。 福島県内の警戒区域での除染については、全体の5%以下しか進んでおらず、さらに最悪シナリオ(東京にも影響が及ぶ)が発生する可能性はまだ残っている、と警告している。

 

http://www.worldnuclearreport.org/IMG/pdf/20130716msc-worldnuclearreport2013-lr-v4.pdf