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津波の被災地で好調なビジネス-自動車販売(WSJ)

2011-09-07 12:45:15

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【陸前高田】3月11日に発生した大津波の被害を受けた岩手県陸前高田市で、好調なビジネスが少なくとも1つある。それは自動車販売だ。  企業を立ち上げ直し、家族の生活再建を進めるため、起業家や住民たちは津波に流された車の買い換えを行っている。

長谷川利昭さん(54)は、津波で流れてきた材木を取り払って高台に小さな仮の自動車販売店を構え、4月末以降に70台の中古乗用車とトラックを販売した。この数は以前、地元の高校近くにあったショールームで彼が1年間に販売していた台数の80台に近い。このショールームは津波により破壊された。

 長谷川さんの「高田自工」やその他の自動車販売業者の販売急増は、東日本大震災によってストップしてしまった経済活動の中で改善を示す動きだ。震災により市民の約10分の1が亡くなり、市街地は壊滅的な被害を受けた。

 陸前高田市の存続には経済の回復と雇用創出が不可欠だ。同市は震災以前でさえも過疎化と高齢化に直面していた。 

 2010年時点で同市の商工会議所に登録されていた699社の企業のうち、555社が津波によって破壊された。自動車販売は大被害を受けたこの地域で、なんとか事業を再開した数少ない小企業の1つだ。他にはコインランドリー、レストラン、ガソリンスタンド、商店などがある。 

ここで事業を行う人々からは、政府が早く動いて具体的な復興計画を示さない限り、このささやかな復興が長続きしない恐れがあるとの不安の声が聞こえる。 

 それでも、長谷川さんは陸前高田の再生に賭けた。新たに用地を借りて自動車修理店兼ショールームを建設するために、5000万円を借り入れた。 

 長谷川さんによると、1カ月の販売台数は約20台で安定している。小型トラックなどがよく売れているという。主として津波後の清掃作業の職を得た人々向けだ。 

 大部分の顧客は津波に流された車の買い換えをしている。陸前高田市はこれまでに、津波で破壊された車を3000台以上回収した。 

 電気技師の岡澤一将さん(33)は7月、陸前高田市にある「ファインオート」で中古のミニバンを62万円で購入した。ファインオートは現在、地域の公民館の近くの場所で営業を行っている。近隣の大船渡市在住の岡澤さん夫妻は、市内の駐車場に車をとめていたが、2人とも震災で車をなくした。 

 岡澤さんは震災後数カ月間、自転車で通勤していたが、ようやく銀行から自動車ローンを借りられることになった。融資を受けるのは簡単でなかったという。津波に流された車のローンがまだ残っているためだ。 

 ファインオートのオーナーの荻原政志さん(39)は5月に事業を再開した。彼の自動車販売店兼保険代理店は、以前は市街地の市役所近くにあったが、津波で破壊された。

 荻原さんによると、5月と6月の売り上げはそれぞれ前年同月の3倍だった。顧客のおよそ8割が、津波で流された車の代わりを求めていたと推測されるという。 

 荻原さんは、同市には現在、建設関連の仕事が多いため、売り上げは今のところ比較的良いと語った。しかし、8月には買い換え需要が落ち込み、売り上げが軟調になると考えている。 

 長谷川さんも売り上げのペースが鈍化しそうだとみている。長谷川さんは市の全体構想が必要だと語る。長く働ける仕事が見つかると思えなければ、人々はすぐに車の購入をやめてしまうと予想されるからだ。

 

記者: Makoto Miyazaki  

http://jp.wsj.com/Japan/node_301588/?nid=NLM20110907