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東電、再稼働なしで 来年3月期も2年連続増益。賠償負担「国の肩代わり」で ”見せかけの増益”(各紙) 

2014-10-25 22:52:50

TEPCO119-01
TEPCO119-01各紙の報道によると、東京電力は2015年3月期に、1250億円前後の経常黒字を確保する見込みであることを明らかにした。東電は2014年3月期も1014億円の黒字を計上している。福島事故の賠償負担を国(税金)で全面肩代わりしていることもあり、原発を再稼働なしでも経営の黒字基調が定着してきたといえる。

 

東電は1月に政府の認定を受けた新総合特別事業計画(再建計画)では15年3月期は1677億円の経常黒字を見込んでいた。その推計は、新潟の柏崎刈羽原発が7月に再稼働するという前提で、さらに今期中に再稼働も再値上げもできなければ15年3月期は150億円の経常赤字に陥るとの悲観的な見通しだった。

 

しかし、夏場の気温が当初予想より低めに推移したため電力需要が昨年より減少し、その結果、割高な重油などを使った火力発電の稼働が減ったことで収益が改善した。また国際的な原油価格の下落や自社のコスト削減効果もあり、利益が予想以上に出る見通しとなった模様だ。コスト削減については、現状よりももう一段踏み込んだ対策を検討していることから、黒字額はさらに増加する可能性もあるという。

 

東電が二期連続で黒字を維持できることで、金融機関との資金調達交渉は比較的スムーズに進むとみられる。東電は、2015年度に3000億円の新規融資を求めており、さらに16年度中には念願の社債発行の再開を実現したい考え。東電債が復活できると、電力自由化に向けた設備強化などのために約1兆円の資金調達を計画している。

 

一方で、東電の黒字拡大は、別の課題も浮上させる。まず、東電が目指している電力料金の再値上げは消費者の説得が難しくなるとみられる点だ。ただ、東電に資金供給している金融機関は追加資金需要に応じるうえで、東電の経営体質が再値上げなしでも継続的に改善しているとの確信が得られるかどうかを、さらに見極めるスタンスを崩していない。東電は消費者の反発と金融機関の評価との両方をにらんだ経営判断を求められることになる。

 

また、当初想定していた柏崎原発の再稼働問題は、さらに緊急性が後退することも必至。東電の原発再稼働戦略の修正も余儀なくされる可能性が高まる。東電の「二期連続黒字」は、福島の賠償負担を事実上計上しないことで実現する「仮の姿」ともいえる。福島を中心とする被害住民との賠償問題は困難なケースが増えており、東電の賠償責任に改めてスポットライトが当たることも予想される。