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仙台・東部沿岸まちづくり説明会終了 難しい住民合意(河北新報)

2011-10-03 13:20:56

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仙台市が東日本大震災で被災した宮城野、若林両区沿岸部の住民と、建築制限や集団移転の方向性を話し合う「東部地域まちづくり説明会」は2日、4町内会で実施され、対象としていた計28町内会全てで終了した。 説明会は9月24日から計19回開催。条例で、住宅の新築や増築ができない「災害危険区域」に指定して集団移転を促す市の方針に、若林区荒浜、宮城野区蒲生などの地区からは、費用負担の軽減策や、住み慣れた地域で生活再建できるようにする津波防御策を求める意見が出された。

 市は「財源となる国の第3次補正予算のめどが付き次第、早急に具体案を説明したい」と繰り返す場面が目立った。
 市は今後、住宅再建について意向を聞くアンケートを実施。第3次補正予算案の成立が見込まれる11~12月に防災集団移転に関する住民説明会や意向調査を行う。現行の市災害危険区域条例は津波浸水地域を規定していないため、市は並行して見直し作業を進め、早ければ市議会12月定例会にも改正案を提出する考えだ。
 仙台市が実施した東部地域まちづくり説明会では、同じ地区内でも集団移転や建築制限のあり方などに多様な意見が出され、住民合意の難しさを浮き彫りにした。移転を迫られる住民の中には、いまだ明示されない費用負担を懸念する被災者もいる。説明会などの場で出た住民の意見から、現時点で直面する課題を整理した。
◎地域分断と防災
 県道塩釜亘理線が6メートルかさ上げされた場合、宮城野区の新浜、南蒲生の両町内会には事実上、地域を分断する「壁」ができる。両町内会は移転対象戸数を減らすため、塩釜亘理線の一部を海側に移す案を要望していた。
 会場でも「地域の分断に伴い、町内のコミュニケーションや信頼関係が絶たれてしまう」との声が出た。市は要望を基に予測した被災実態を「浸水の深さがおおむね2メートル以上で、一部は4メートルを超えてしまう。浸水域も広がる」と説明した。

 災害危険区域設定の根拠となる津波浸水シミュレーションは現在、海岸堤防の高さを7.2メートルとして作成している。市の説明は、堤防を6.2メートルとした当初の想定を前提としており、住民から「結論ありきだ」と疑問の声も上がった。

 当面の災害時の避難誘導態勢の不備を指摘する意見が出たほか、台風15号で決壊した七北田川の土のう積みの仮堤防について、早期に恒久的な堤防を整備するよう求める声も目立った。

 市は「早急に取り組む。避難場所を11月には知らせたい」と述べた。
 説明会は新浜、堀切両町内会が1日で約210人、南蒲生町内会対象の2日には約280人が出席した。

◎現地再建の是非
 宮城野区白鳥地区は市の震災復興計画中間案で、新築や増築の際には2階建て以上にして避難できる部屋を設けるという、緩やかな建築制限案が示された。

 同地区3町内会を対象にした9月25日の説明会には、約200人が参加。住民からは「現地再建だけに固めてほしくない」「海に近い蒲生地区などに住宅があったので被害が軽減されたが、今は状況が違う」「地盤沈下で台風でも浸水被害が出ている」など、不安を訴える発言が相次いだ。

 市は「白鳥地区は津波到達が遅く、建物の流失が少ない。2階に避難することで一定の安全性は保たれる」と述べ、理解を求めた。
◎移転用地の確保
 宮城野区の上岡田、下岡田、荻袋の3町内会は、塩釜亘理線と仙台東部道路に挟まれた地域で、集団移転を促される地域から移住先として望む声がある。

 約120人が来場した1日の説明会では、同地区付近が「市街化調整区域内移転検討地区」とされたことについて、「地権者の了解は得ているのか」「集団移転してくる住民と一緒に、まちづくりを話し合える場がほしい」といった意見があった。

 地区には、塩釜亘理線の再整備にかかる時間や、復興の在り方に不安を抱く人もいるからだ。
 市は「まだ何も決まっていない。移転先を確定していく段階で、説明する機会を設けたい」と強調し、かさ上げする塩釜亘理線の工事完了時期については「少なくとも5、6年かかる」との見通しを示した。

http://www.kahoku.co.jp/news/2011/10/20111003t11023.htm