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★政府の東電経営・財務調査委員会報告書公表 東電の廃炉費用を大幅圧縮 (FGW) 「隠れ負債」 として温存?

2011-10-03 20:19:39

政府の「東京電力に関する経営・財務調査委員会」は3日、東電の当面10年間の事業計画等を試算する報告書を公表した。この中で、福島第一発電所の廃炉費用を1兆1500億円とはじいた。ただ、対象は1~4号機だけで、「保守的見地から見積もられた廃炉費用の現在価値への修正は行わず」としており、極めて限定的な推計にとどめた。FGWは廃炉費用を7兆~9兆円と推計しており、大幅な「隠れ負債」が存在する可能性もある。

 東電は廃炉の費用として、福島第一の1~4号機について、資産除去債務1867億円、災害損失引当金4250億円、合計6117億円を計上している。今第一4半期には廃炉費用として693億円の災害損失引当金を上積みしているため、1兆1500億円との差額の追加引当額は、4700億円としている。

同報告が大幅な“過小”である懸念は、報告自体が認める以下のような点が根拠となる。その一つは、資産除去債務との関係である。企業は通常、将来の資産の解体処理が確実なものんについてはその処理費用を現在価値化して、資産除去債務を計上する。ただ、今回のような事故の場合は、事前の推計を上回って処理額が膨らむので、資産除去債務ではなく、別途、引当金を計上して処理するのが原則である。

ところが、東電は、事故の1~4号機は現時点では放射能濃度が高いものの、瓦礫の撤去や建屋内の放射能汚染除去を十分に行えば、「通常通りの解体処理」ができるとして、4機とも資産除去債務の対象とするという。そのため、「通常」の状態に戻すまでの間の費用を災害損失引当金の追加計上で費用処理するとし、そうした処理費を含めた中期的課題に対応する引当金を2500億円としている。

 しかし、1~4号機とも、炉心溶融(メルトダウン)を起こし、核燃料が格納容器外に漏れている可能性が指摘されている。にもかかわらず、通常の廃炉処理を前提とした費用計算をするのは、極めて強引と言わざるを得ない。さすがに報告書は「(当該金額は)会計上の引き当ての要否とは無関係に検討がなされている」と限定を付けている。

 また廃炉対象の原子炉を1~4号機に限定し、事故後同時に停止している同じ敷地内の5,6号機の廃炉費用を計算に入れず、減損扱いしかしていない。両機についての取り扱いについては今後の変更をにおわせているものの、同じく停止状態にある福島第二の4機については何ら指摘がない。ということは第二の4機は、通常廃炉もせず、いずれ再開する想定とも思える。しかし、4機が連動してメルトダウンを起こした可能性が強い第一原発に隣接した原発を、いつ再稼働できるのだろうか。本来はこれらの原発も廃炉対象として計算に含めるべきだろう。

FGWでは、こうした点も含めて推計すると、米英での通常廃炉の平均費用が1機4000億円~7000億円とされることから、福島の場合、第一4機の事故廃炉費用(4兆8000億円)と、2機の通常廃炉(ただし汚染地内での作業なので、追加負担有)、第二の4機の通常廃炉(同:合計2兆4000億円~4兆2000億円プラスα)で、総額7兆2000億円~9兆円プラスαの解体処理費用が必要とみる。

 メルトダウンの発生状況によっては、これらの数字はさらに大きく膨らむ可能性を抱えている。また通常の資産除去債務の場合、建屋などの将来の建て替えなどの時期を想定して、長期にわたる減価償却費用として処理するが、今回の事故原発の場合は、放射能汚染の拡散を防ぐためにも、できるだけ早期に処理を進める必要がある。そうしたことを考慮すると、今回の報告書の推計を上回る6兆円~8兆円もの東電の「隠れ負債」は、同社の企業価値を大きく棄損する可能性がある。(FGW)

関連記事 http://financegreenwatch.org/jp/?p=857 

政府の東電に関する経営・財務調査委員会報告 http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/keieizaimutyousa/dai10/siryou1.pdf