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英国が東電原発事故調査の「Fukushima Report」で、日本の原子力行政の“欠陥”指摘(FGW)

2011-10-11 22:44:32

ONR publishes "lessons learnt" report
英国政府のONR(原子力規制委員会)は11日、東京電力福島第一原子力発電所の事

ONR publishes "lessons learnt" report


故を検証した「Fukushima Report(Japanese

 earthquake and tsunami: Implications for the UK nuclear industry」の最終報告を公表した。今年5月の中間報告に次ぐもの。その中で、間接的な表現ながら、経済産業省主導のこれまでの原子力行政の独立性のなさや、東電の津波など自然災害対策の不十分さを指摘した。

報告書を受けた英国のエネルギー気候変動省(DECC)のクリス・ハーン・エネルギー担当相は、「福島で事故を起こした原発はGEの沸騰水型(BWR)で、英国の原発とは形式が異なる。また原発の安全性に関するアプローチが英国と日本及びその他の国では異なる」として、英国の原発規制システムの頑強性と、原子力産業が継続的な改善志向であることを強調した。

報告書は英文300ページを超す大部。ONRのチーフ・ニュークリア・インスペクターのDr.Mike Weightmanが中心になってとりまとめた。基本的には、日本の原発事故からの教訓を学ぶとともに、英国の原子力行政への不信感を払しょくするのが狙い。

この中で、日本の原子力行政について触れている。複数の監督当局が原子力行政に関与する中で、主要官庁の原発の安全性に責任を負うと同時に、原発建設の許可を与え、原発促進の役割も担う経済産業省の責任について言及している。まず、2007年に国際原子力機関(IAEA)が実施した日本の規制行政へのレビューで、原子力安全・保安院の役割の明確化などを求められていたことを指摘。

経産省と保安院、東電などの間での“自由な人の移動(天下りを言う)”が、癒着を生んだと疑う報道を加速させたことや、複数の規制当局の存在が責任の不明確を招いたことなどを指摘した。また事故が起きる直前に保安院が福島第一のもっとも古い原発が償却期間を過ぎているのに10年の稼働延長を許可したことについても、「延長を正当化する情報は英国では得られていない」としながら、ドイツの業界団体(VGB)の分析レポートが、「日本の規制当局は、電力会社に対して予測可能な自然災害に対する合理的な備えを要求することに失敗した」と指摘していることを引用している。

さらにVGBレポートは、東日本大震災の津波が東電福島原発において14メートルにも達したことを、「日本では決して、異常でも到底起きえないことでもなかった。日本では歴史的に30年平均で発生している」と批判していることを取り上げ、これに対して、英国の災害対策は1万年に1回の頻度での発生可能性を踏まえていると、日本との姿勢の違いを強調している。そして「利用可能な情報からいうと、福島第一の対策は、(英国並みの)基準には合致していなかった」としている。

 今回の報告書は、あからさまな日本当局、東電批判は避けてはいる。だが、メディアや他の報告書を引用する形で、日本の事故の原因として、原子力行政が「安全第一主義」の視点に立っていなかったことと、事故発生後の緊急対策に手落ちがあったことを暗に批判している。そうすることで、そうした日本とは異なり、英国の対応は万全を期していると強調するものとなっている。

当然、この報告書は英国政府の意を受けたもので、国内の反原発ムードを鎮静化する目的があることは明らかだ。そうした英国の国内事情を抜きにしても、指摘された日本の“落ち度”は国際的にも定着しつつある諸点でもある。

 だが、日本国内では依然、原因分析と効果的な対策とが混在した状況が続いている。今回、英国から指摘された規制当局と発電事業者の関係についても、先行きの改善の方向性が明確で、かつ、眼前で放射能汚染にさらされている人々への防御・安全対策も、将来の安心対策も、十分な手が打たれず、不安感だけが高まっている。(FGW)

Japanese earthquake and tsunami: Implications for the UK nuclear industy: Final Report : http://www.hse.gov.uk/nuclear/fukushima/final-report.pdf