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電力小売自由化 電気料金が5%安ければ3%、10%安ならば16%の家庭が新電力へ乗り換え。移行額は約8900億円分。野村総研が試算(RIEF)

2015-10-15 16:43:43

NRI1キャプチャ

 野村総合研究所(NRI)は、2016年4月に始まる電力小売全面自由化によって、一般家庭が別の電力会社へ契約を切り替える目安となる金額水準をアンケート調査を使って試算した。

 

 調査では、5%の値引きがあると、3%の家庭が現行の電力会社から新電力会社を選択するとし、また10%値引きの場合は、約5倍の16%の家庭が新電力を選ぶと答えた。この結果、10%前後の値引き価格を新電力各社が設定できれば、一定の顧客を獲得できることが明らかになった。

 

 調査は、NRIが開発したエリアデータ分析ツール「Market Translator (マーケット・トランスレーター)」用いて、今年8月に全国の個人へのアンケート調査を実施、それを分析した。サンプル数は全国をカバーし、約11万という。

 

 調査結果によると、消費者が電力会社を乗り換える(スイッチング)際の要素として、「価格(電気料金)」「エネルギー源」「手続きの容易さ」「安心感」「実績」の5つを聞いたところ、「価格(割引、セットメニュー割引等)」がもっとも多く46%にのぼった。

 

 それ以外では、「新電力会社に対する安心感(信頼度)」15%、「手続きが容易」15%、「実績」14%,、「電源が自然エネルギーであること」10%、となった。「価格」を評価する向きが図抜けて多かったことになる。

 

 そこで次にアンケートは、料金以外の要素を一定の条件として定めたうえで、いくらの値引きだったら新電力に乗り換えるかを聞いた。料金以外の各要素は「エネルギー源」が石油・天然ガス、「手続き」は携帯電話野変更手続きと同程度、「安心感」は新電力各社は多くの人が知っている大企業、「実績」は1年未満のデータ、とした。

 

 その結果、5%の値引率では新電力に移行する世帯の割合は3%にとどまるが、10%の値引きでは16%が移行する、との回答が出てきた。野村総研は、この「1割値引き」が、消費者に訴求するベンチマークの一つになる可能性がある、と指摘している。

 

 この値引率を、全国の家庭向け電気料金に換算すると、5%値引きの場合は、約1800 億円が新電力にシフトし、10%値引きの場合は、約8900億円がシフトする計算になる。

 さらに野村総研は、こうした価格効果に加えて、新電力各社の広告宣伝活動や、他のサービスとのセット割引料金(通信サービスやガス料金などとのセット)などの他の要因によって、消費者の「乗り換え意識」が刺激されることから、今回の調査の比率よりも高い割合で新電力移行が進む可能もあるとしている。

 また調査では都道府県ごとの乗り換え率についても推定している。この場合の調査の前提条件は、新電力に切り替えた場合、既存の電力会社の料金プランより5%安くなるというもの。結果、新電力会社への乗り換え率が最も高い都道府県は東京都の3.8%で、最も乗り換え率が低いのは岩手県の2.6%。さらに市町村レベルや町丁目レベルにまで細かくみると、乗換え率の格差は開く傾向になるという。

 

 この場合、地域ごとの乗り換え意識の差に影響する要素として、次の3点を指摘している。

①居住者の進取・保守的要素=年齢:高い層ほど乗り換え率は低い。職業:金融、通信、不動産などで高く、第一次産業、建設業、製造業などで低い

②経済要素=富裕層(金融資産1億円以上)では低く、準富裕層(同5千万~1億円)とアンダーミドル層(同1千万円以下)では高い

③地理的要素=都市部で高く、田園地域で低い

 

NRi2キャプチャ

 

 

https://www.nri.com/jp/news/2015/151008_1.aspx