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中国、2年前の新規石炭火力発電所「建設中断」の国策、いつの間にか"緩和”、宙に浮いていた46.6GW分の建設が始動か。米環境NGOが衛星画像の分析で指摘(RIEF)

2018-08-10 22:02:51

crimatechina1キャプチャ

 

 世界で最も温室効果ガス排出量の多い中国は、2016年に石炭依存体制の脱却を宣言し、新規の石炭火力の建設中断を宣言した。だが、米環境NGOが衛星情報を分析した調査によると、最近になって、一部で石炭火力の新設が認められるなど、緩やかな”規制緩和”が進み始めているという。中国は2030年前後に、温室効果ガス排出量をピークアウトさせる目標を公約しているが、このままでは実現は危うくなりそうだ。

 

 (写真は、衛星画像で分析した中国・寧夏回族自治区での石炭火力発電所サイトの変化)

 

 世界の石炭火力発電所13000以上を追跡している米NGOのCoalSwarmが、Planet Labs の衛星画像を使った分析によると、中国国内では、新設あるいは再稼働準備中の石炭火力発電所が合計46.6GW分に達してることがわかった。これらの胎動分がすべて稼働すると、今年の中国の石炭火力による電力は前年比4%増すると推計している。

 

 中国は2016年4月、国家発展改革委員会(NDRC)と国家エネルギー局が、既に承認されたプロジェクトを含め、15の地域での新規の石炭火力発電所の建設中止と、13省での新規プロジェクトの承認の停止を宣言。その後、2017年1月には、建設予定の石炭火力発電所104カ所(合計120GW)の計画停止を発表した。

 

河南省での石炭火力発電所サイトの変化
    河南省での石炭火力発電所サイトの変化

 

 さらに第13次五カ年計画書(2016~2020年)において、石炭から、非化石エネルギーやクリーンエネルギーへの転換を進めることを強調、150の石炭火力の停止・運休することを政府方針として明記している。

 

 実際に、CoalSwarmの調査では、2016年の中国の石炭エネルギー量は前年比15%減と大きく減った。中国政府が新規の石炭火力発電等の建設を中断させてきた理由は温暖化対策や住民への健康被害の増大もある。だが、最大のポイントは、すでに石炭火力の発電能力が過剰になっているとの判断だった。ところが、わずか2年の「中断」を経て、46.6GWもの新規・再稼働が始動している背景には、電力需要の急速な回復が影響しているようだ。

 

 国家エネルギー局の発表では、今年上半期の電力需要の増大を受けて、同期の石炭火力発電での石炭消費量は前年比3.1%増と上向いている。石炭火力の発電量が増えているのは、電力需要が同じ期間に9.4%増と大きく伸びたことが影響している。さらに今年の世界的な酷暑の影響で、山東省、河南省、湖南省、湖北省、浙江省などで電力需要が供給を大きく上回っており、山東省では電力不足は3GWに達しているという。

 

中国の大気汚染の改善は見通せず
     中国の大気汚染の改善は見通せず

 

 こうした状況を受けて国家エネルギー局は、5月に陝西省、江西省、湖北省、安徽省での新規石炭火力発電所の建設を許可した。さらに他の4地域でも規制を緩和している。

 

 中国の電力専門家によると、16年に中断された新規石炭火力発電所事業のいくつかはすでにほとんど完成している。だが、政府の規制によって発電できない状態が続いてきた。しかし事業者の中には、事業建設のために調達したローンの元利金支払いに直面しているところも少なくないという。こうした事業者からの事業再開要請が地方自治体などに集中している。

 

 では石炭火力の過剰供給体制が2年間で改善したのかというと、そうでもないようだ。中国の石炭火力の稼働率は2016年が過去50年でもっとも低かった。だが、現状も年5500時間操業(62.8%)の安定レベルには程遠く、2015年のレベルにさえ戻っていない。つまり、国全体でみると、過剰供給体制はほとんど改善されていない。

 

 にもかかわらず、新規建設がなし崩し的に始まっているわけだ。溢れかえった石炭火力の供給力を、一時的な需要の変動によって政策的に抑えきれない状況に陥っているのが、現在の中国のエネルギー政策の脆弱な姿なのかもしれない。

 

 さらに問題なのは、石炭価格が上昇していることだ。新規に操業を開始した石炭火力も、既存の石炭火力も、今年上半期には操業するたびに損失を計上する状況になっているという。しかも、米中の貿易摩擦が激化すると、現在の一時的な産業部門の電力需要増が消えてしまうリスクもある。中国のエネルギー・温暖化政策の「場当たり性」を露呈した形でもある。

 

http://coalswarm.org/