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これも原発被害: イノシシ害拡大、県の年捕獲目標500頭増 原発事故で未達懸念も(茨城新聞)

2012-03-22 15:46:20

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イノシシによる農作物への被害が依然として収まらないため、県は4期目となる県イノシシ保護管理計画(2012年4月1日から2年間)に盛り込む年間捕獲頭数目標を第3期計画よりも500頭増やし、3500頭にすることを決めた。ただ一方で、高齢化などにより狩猟者が減少していることに加え、原発事故に伴う放射性物質の影響で食用としての狩猟を控える傾向もあり、計画通りに対策が進むかという懸念もある。

県環境政策課によると、第3期計画では3千頭の目標を掲げ、09年度は2969頭、10年度は2905頭を捕獲した。だが、10年度の農作物被害額は前年度比17・9%増の7951万円に上り、第1期計画が立てられた05年度と比較すると、被害額は2・4倍に膨れ上がった。

最も被害額が多かったのは稲の3996万円。この2年は果樹被害の比率が高まり2千万円を超え、芋類も1千万円を超えた。県はさらに捕獲頭数を増やさなければ被害は収まらないとして次期計画の捕獲目標頭数を3500頭に増やした。

しかし、捕獲の主力となる狩猟者の確保が困難な状況だ。同課によると、10年度の散弾銃やライフル銃を扱う「第1種銃猟免許」の登録者は4249人で10年前と比べ45・7%も減っている。うち60歳以上の比率は69・0%も占めている。銃刀法改正で09年12月からは銃の所持が厳格化され、新たな免許取得者が増えていないことも影響しているという。

さらに、昨年の福島第1原発事故の影響も深刻だ。イノシシ肉から暫定基準値を超える放射性物質が検出されて、狩猟者からは「捕っても食べられないなら、狩猟に出る意味がない」として猟を控える傾向にある。

常陸太田市や大子町などは捕獲減少を懸念し、捕獲に対して助成することを決め、捕獲頭数の確保に取り組んだ。その結果、同市は約300頭を捕獲。農政課は「助成によって一定の効果が出た。助成がなければ、被害はさらに広がっていただろう」とみている。

次期計画では農作物被害を現在の約半分程度の「00年度の水準に抑える」としているが、70代の県猟友会の一人は「捕れるようになっても捕る人がいなければ計画は“絵に描いた餅”になる。このままでは中山間地域の農業は崩壊してしまう」と危惧している。