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デンプンとセルロースから高強度・高耐水性の海洋生分解性プラスチック開発。普通のプラより強度2倍、海水中一カ月で分解。安価で大量生産可能。大阪大学と日本食品化工の研究チーム(RIEF)

2020-03-18 15:42:41

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 大阪大学工学部の研究グループと日本食品化工は、どこでも手に入るでんぷんとセルロースを複合化した海洋生分解性プラスチックを開発した。既存の生分解性プラスチックの多くは、脂肪族ポリエステルに限定され、価格、生産量等が課題となっているが、今回開発されたものは、身近にあるバイオマスを組み合わせており、安価で高強度、生分解性の高いプラスチックシートで、開発者は「海洋ゴミ問題の解決 に大きく資するのみならず、地球の物質循環や CO2 削減に貢献する」と説明している。

 

 (写真は、顕微鏡で拡大した新開発のバイオマスプラスチック。水につけると、左上の図のように、大きく穴が開いたように溶けていく)

 

 開発したのは、大阪大学大学院工学部工学研究科の麻生隆彬准教授、 宇山浩教授らの研究グループと、日本食品化工㈱ 。デンプンにセルロー スを加えて独自技術により複合化すると、デンプンの 耐水性が大幅に向上し、得られたシート複合材料は優れた耐水性と高い強度を示し、海水中でも高い生分解性を発揮したという。日本食品化工は、トウモロコシの一貫加工を主として、食用、工業用のデンプン製造をしている。

 

 研究グループによると、現在、日本で開発されている海洋生分解性プラスチックには、 PHBH(カネカ製)や PBS(三菱ケミ カル製)がある。これらはいずれも脂肪族ポリエステルに分類される。ポリエチレン、ポリプロピレンなどの既存のプラスチックと比して性質が劣り、価格も高く(2倍以上)、生産量が極めて少ないなどの課題が指摘されている。

 

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 そこで同グループは、安価でどこででも手に入れることができるデンプンの活用を検討。デンプンの弱点である耐水性の難点の克服を目指した。その結果、同じく手に入れるのが容易なセルロースと組み合わせて、複合化することに成功。耐水性を克服する一方で、海水中での分解性を確保できたという。

 

 デンプンは、トウモロコシやイモ類に多く含まれる炭水化物の主成分。セルロースも植物繊維として世界中で豊富に存在する。開発されたプラスチックシートは透明で強度は汎用プラスチックの2倍以上という。海水中に一カ月間漬けておくと分解される。シート表面にバイオフィルムが形成され、同フィルムから代謝された酵素によって生分解されるという。

 

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 デンプンとセルロース原料の生分解性プラスチックシートの製造方法はシンプル であるため、今後、企業との連携による工業化プロセスの開発により、早期の実用化が期待される、としている。これまでに開発された海洋生分解性プラスチックのPHBH、PBSはバイオマスの発酵を経て生産されるためにバイオマスの構造が残らない。一方、今回の開発技術はバイオマス固有の構造をそのまま活かせるため、自然が生み出す独自のバイ オマス構造の特徴を元にできるという。

https://www.eng.osaka-u.ac.jp/ja/dat/news/1583468108_1.pdf

https://www.nisshoku.co.jp/