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温暖化対策のLED照明、夜間の街灯での使用で、生態系に顕著な影響。蛾を対象とした調査では個体数をほぼ半分減らすことが判明。英研究チーム(RIEF)

2021-08-27 14:48:32

LED001キャプチャ

 

   CO2削減の省エネ策として普及が進むLED(白色発光ダイオード)の街灯が、夜行性の蛾(ガ)の個体数を最大で47%減少させるとともに、幼虫(毛虫)の成長も遅らせるとする研究結果が公表された。LEDは気候対策にプラスだが、生態系をかく乱するリスクがかなり高いことがわかった。

 

 研究は英生態学・水文学センター(UKCEH)のダグラス・ボイズ(Douglas Boyes)氏、ニューカッスル大学のダレン・エバンス(Darren Evans)教授らの研究チームがまとめた。25日公表の科学誌cienceAdvancesに「Street lighting has detrimental impacts on local insect populations」のタイトルで掲載された。https://advances.sciencemag.org/content/7/35/eabi8322

 

 調査は、夜行性の昆虫の代替指標として蛾(ガ)を対象とした。ガが、卵から孵化して、幼虫(毛虫)を経て、成虫になるまでの変化を観測した。蛾は成長過程での生息範囲が数m以内にとどまる習性があるので、観測し易い点も評価した。

 

 対象地域は、英イングランド南部。LED街灯に照らされた通常の道路沿いの生け垣や草地と、ほぼ同じ環境で街灯に照らされていない同数の地点を比較調査した。その結果、LED街灯に照らされた場所の幼虫の生息数は、街灯のない場所と比べて沿道の生垣で47%、沿道の草地では37%少なかった。

 

  また日光に近いナトリウムランプ(SL)の照明と比べても、生垣では41%少なかった。ナトリウムランプ下での幼虫の生息数は、街灯のない場所とほぼ同じだった。幼虫の摂食行動がLEDで乱されるとみられる。これらのことから、照射の有無だけではなく、LEDの照射が生態系に与える影響が有意であることを示しているといえる。

 

 論文主執筆者のボイズ氏は、LED街灯に照らされる場所では、ガの雌が産卵しなくなることが原因の可能性が高いと指摘している。

 

 LED街灯は、ガの幼虫の摂食行動にも影響を与えることがわかった。街灯に照らされた場所にいる幼虫の体重は、街灯のない場所の幼虫より重かったが、幼虫がこれまで数百万年に及ぶ進化で適応してきた生息条件と相反する不慣れなLED照明環境に適応できず、成長を急ぐあまり食べ過ぎるためとみている。

 

 LED照明がガの成長に明確な影響を与えることは、蛾が生態系の中で果たしている役割にも影響を与えることになる。ガは蝶や蜂などとともに、植物の受粉に貢献するほか、鳥やコウモリ等の脊椎動物やクモやスズメバチ等の餌にもなっているが、成長の変容によって、これらの生態系にも連鎖的に影響を及ぼすことが想定される。

 

 街灯等の野外で使用されるLEDの生態系への影響についての研究調査はこれまで例がない。またこれまでの照射による生態系への影響調査は、成虫への影響を対象としているが、今回は成長過程を通して受ける影響を調べている。

https://www.ukri.org/news/led-streetlights-reduce-insect-populations-by-half/?utm_medium=email&utm_source=govdelivery

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