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京都大学とダイセル、木材や農水産廃棄物等のバイオマスから化学原料製造で連携協定。「バイオマスバリューチェーン」を構築し、将来はバイオプラスチック製造を目指す(各紙)

2021-10-09 13:16:45

kyoudai001キャプチャ

 

   京都大学と化学メーカーのダイセルは8日、木材や農水産廃棄物等のバイオマスから化学原料をつくる共同研究等で包括連携協定を結んだと発表した。両者は将来、バイオマスからプラスチックの原料になる成分を取り出し、現在、プラスチックの原料として使われている原油の代わりにバイオプラスチックの製造を目指すとしている。

 

 両者は、今回の連携によって、バイオマスの新しい変換プロセス「新バイオマスプロダクトツリー」 の実現に向けた研究開発と持続的循環利用の実現を目指す。木材などの天然高分子は元来溶けにくく、現在の製造プロセスではエネルギー多消費型になっている。今回の京大との連携によって、常温常圧で木材を溶かす技術を確立するとしている。

 

 木をより細かく粉砕し、ギ酸などの薬品を使って、風呂程度の比較的低い温度で溶解させる。共同研究では、この溶解液をプラスチックの原料の成分などに変換したりする。この技術によって、ダイセルの主力製品である木材由来の酢酸セルロースのほか、木材に含まれるヘミセルロー ス、リグニンなども活用した高機能製品の開発も可能となるとしている。

 

 同技術の強みはコストや環境負荷を抑えながら「木を溶かす」ことができる点という。共同研究で開発中の技術では、木材に限らず、農林水産業の廃棄物からも有益な成分の抽出が可能。有価で処分されるこれらの廃棄物素材を二次産業の原料として活用することで、一次産業の経済性を向上させ、 一次産業と二次産業に循環を生む新しい「産業生態系」の構築が可能になると展望している。

 

 両者が掲げる「バイオマスバリューチェーン構想」は、素材利用の経済循環を創り出すことによって、林業を復活させ森を再生するとともに、山・川・海を含む自然の生態系の回復にも寄与する、という考えに基づく。産学官の垣根を越えて、志を共にする皆様と一緒に、実現に向けて取り組んでいくとしている。

 

 連携には、京大側が大学院農学研究科、大学院人間・環境学研究科、化学研究所、エネルギー理工学研究所および生存圏研究所が参加し、ダイセル側はリサーチセンターが拠点となる。京大宇治キャンパス内に産学連携共同研究の拠点「バイオマスプロダクトツリー産学共同研究部門」を設立する。協定は2030年3月末まで。

 

 京大の湊長博総長は「京大のバイオマス研究は、脱化石燃料と地球環境の保全で注目されている。木材や農水産廃棄物を高付加価値物に変換して、新産業の創出に寄与したい」と話した。ダイセルの小河義美社長は「(自然に分解する)生分解性、循環型の原料が求められており、京大と一緒に持続可能なサプライチェーンをつくる」と決意を述べた。

https://www.daicel.com/news/assets/pdf/20211008.pdf

https://digital.asahi.com/articles/ASPB86GB2PB8PLZB00G.html