HOME |住宅地や病院、学校等を拠点とするウクライナ軍に対し、国際人権団体アムネスティが「国際人道法」違反と指摘。ウクライナは猛反発。論理も人権配慮も吹き飛ぶ戦争の無慈悲さを映す(RIEF) |

住宅地や病院、学校等を拠点とするウクライナ軍に対し、国際人権団体アムネスティが「国際人道法」違反と指摘。ウクライナは猛反発。論理も人権配慮も吹き飛ぶ戦争の無慈悲さを映す(RIEF)

2022-08-17 18:05:03

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 ロシアのウクライナ侵攻で続く戦闘の軟化で、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが、「ウクライナ軍が、ロシア軍の侵攻撃退にあたって、人口の多い住宅地に拠点を設置して攻撃することで、民間人を危険にさらしている」とする報告書を公表した。これに対して、ウクライナのゼレンスキー大統領が「侵略者から犠牲者に責任を転嫁しようとした」と強く反発、アムネスティは「深い遺憾の意を表明する」と釈明したが、戦場で人権が軽視、無視される実態は続いている。

 アムネスティの報告書は、アムネスティの調査員がロシアの侵攻後の4月から7月までの数週間にわたり、ハリキウ、ドンバス、ミコライウでのロシアの空爆を調べた。空爆を受けた地域を視察し、生存者、目撃者、犠牲者の親族に聞き取りをし、リモートセンシングによる分析や武器の分析を行った。

 これらの調査によって、ウクライナ軍が19の町や村で、人口が密集する住宅街に拠点を置き、攻撃を行った証拠を得た。これらの証拠のいくつかについては、衛星画像の分析で裏付けを取った、としている。そのうえで7月29日に詳細な調査結果を、ウクライナ政府に送付したという。

 報告書では「ウクライナ兵が拠点を置いた住宅街の多くは、前線から何kmも離れており、民間人を危険にさらさずに拠点として利用できる場所は、他にもあった」と指摘。住宅地の建物に拠点を置いたウクライナ軍が、市民に近くの建物から退避するよう求め、あるいは退避を支援した事実を確認することはできなかった等と説明している。

 

 ウクライナ軍が5つの町で病院を事実上の軍事拠点として使っていることも確認。別の町では、兵士が病院近くから攻撃していた。ウクライナ軍はハリキウ郊外にある医学研究機関の敷地にも拠点を設け、ロシアの空爆を受けて職員2人が負傷した。病院を軍事利用することは、明らかに国際人道法に違反すると指摘。ウクライナ軍はドンバスやミコライウの町や村では、学校にも拠点を置いているとしている。

 

 報告書では、ロシア軍の攻撃についても「同軍は多くの攻撃で、国際的に禁止されているクラスター弾などで無差別に殺傷し、広範囲に影響を及ぼす爆弾を使用している。さまざまなレベルの精度の誘導兵器を使い、中には特定の対象を狙うことができるほど精度の高いもあった」と指摘。ロシア軍の無差別攻撃と、病院や学校等を攻撃対象から除外できるのに、していない実態にも言及している。

 

 そのうえで「ウクライナ軍が人口密集地内に軍事拠点を置いていることは、ロシアの無差別攻撃を決して正当化するものではない。紛争当事者は、常に軍事目標と民用物を区別し、武器の選択を含め、民間人への被害を最小限に抑える上でのあらゆる実行可能な予防措置を取る必要がある。民間人を殺傷し、民用物を破壊する無差別攻撃は戦争犯罪にあたる」と結論づけている。

 

 ウクライナ政府に対しては「軍を人口密集地から距離を置いた場所に移動させるか、軍事活動地域からの民間人の退避を直ちに実行すべきだ。軍は決して病院から攻撃をしてはならないし、同様に学校や民家の使用は、代替手段がない場合の最後の手段でしかない」と要求している。

 

  こうした報告書の指摘に対して、ウクライナ側は猛反発。同国政府だけでなく、アムネスティのウクライナ事務所代表が「調査はロシアのプロパガンダの道具になっている」と抗議して辞任した。ゼレンスキー大統領は「同団体は侵略者から犠牲者に責任を転嫁しようとした」と反発した。

 これを受けてアムネスティ側は、ウクライナ軍の戦闘戦術に関するを批判した自らの報告書について「われわれの報道発表が引き起こした苦痛と怒りを大変遺憾に思う」と表明。そのうえで「アムネスティの調査に基づく指摘は、国際人道法の規定に基づく。国際人道法は、すべての紛争当事者に対し人口密集地やその近隣に軍事目標を置くことを極力避けるよう求めている。戦争に関する国際法の目的の一つは、民間人の保護だ」として、国際人道法の遵守を改めて求めた。

 ロシアのウクライナ侵攻では、ロシア軍がウクライナの原発を占拠し、同原発を「盾」にして攻撃する「原発人質作戦」を展開しているほか、アムネスティが指摘するウクライナ側の戦法も「住民を盾」にした、結果としての「人質作戦」との見方もできる。戦場では国際法も考慮されないのが現実だ。相手を殺さなければ、殺されるだけだから。https://rief-jp.org/ct13/127479?ctid=76

 自国民を「盾」にする戦法は、旧日本軍も沖縄戦で実践した。人類は何千万人を殺し合っても、そこからの反省は長続きせず、再び、弱い者が巻き込まれ、無益に殺され続ける。「愚か」としか言いようがない。

https://www.amnesty.or.jp/news/2022/0810_9657.html

https://www.amnesty.or.jp/news/2022/0810_9658.html