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天然ガスの活用は米国産業復活のチャンス=シェルのボーサーCEO (WSJ)

2013-01-18 21:32:34

ShellCEO
ShellCEOロイヤル・ダッチ・シェルは現代の巨人だ。44カ国に資産を有し、6大陸で4702億ドル(約41兆7000億円)の売上高を誇る石油・天然ガス会社だ。世界有数の石油生産会社の1つであることに依然変わりないものの、天然ガスへのシフトを加速しており、カタールで天然ガスをよりクリーンなディーゼル油に転換する事業を推進しているほか、オーストラリアやアフリカ、カナダで巨大な輸出設備の建設を進めている。

2009年に最高経営責任者(CEO)に就任したピーター・ボーサー氏(54)は、時に利益回収までに何十年をも要する、数十億ドルに及ぶ戦略的な投資について最終判断を下す一方、刻々と動く自国と海外の政治情勢の中で常に頂点に立っている。同社の12年の資本予算は320億ドルと、米インターネット検索大手グーグルや米航空機大手ボーイング、米IT(情報技術)大手IBMの3倍以上に上る。

シェルは、ガスや石油を地中から掘削して販売しているが、それに取って代わる開発手段を見いだす必要に迫られている。世界有数の掘削可能な地域の多くは外国政府に立ち入りを禁じられているか、あるいは技術的に利用が難しくなっているためだ。

米ニューヨーク市でこのインタビューが行われたあと、北極海という厳しい環境下での同社の掘削プロジェクトは、掘削リグが保守点検に向かう途中荒波によってアラスカ南部で座礁し損傷するなど相次ぐ困難に見舞われている。このアラスカ沖北極海の掘削プロジェクトについて同社にコメントを求めたが、米沿岸警備隊が座礁事故の調査中であるとの理由などから、ボーサー氏はコメントできないとの回答しか得られなかった。

しかし、ボーサー氏は、エネルギーの未来や世界の紛争地域でのビジネスの現状、中国のエネルギー政策が欧米のそれよりも優れていると考える理由などについて本紙に語った。

 

以下は主なやり取り。

 

WSJ:エネルギーを取り巻く環境は変化しており、化石燃料の未来に対する不透明性は増している。今後の見通しについてどう思うか。

 

ボーサー氏:エネルギー需要は現在と比較して、向こう40年で2倍に拡大するとみている。そのうち、3分の1を再生可能エネルギーが占めることになるだろう。原子力が5~10%程度で、残りをガス、石油、石炭などの化石燃料が占めるとみられる。化石燃料サイドにパイプラインを敷設するために巨額の投資も必要になるだろう。ガスが圧倒的役割を果たすようになり、石油や、長期的には石炭をもはるかに上回るペースで成長するだろう。

 

WSJ:シェルは中国でのシェールガス開発に関わっている。中国が掲げる果敢な産出目標は達成可能か。

 

ボーサー氏:中国には相当な(シェール)埋蔵量があるとみている。実際、米国の埋蔵量よりも多い可能性もある。地質が米国よりもやや複雑なため、コストはもう少し多くかかるだろう。産出目標は野心的と言えるが、われわれはこのシェール開発推進に必要な支援を得られつつある。中国は目標に関して真剣で、達成する意欲だ。しかも中国には実績がある。彼らは通常、自らの目標を達成する。

 

WSJ:中国での開発事業は欧米とどう違うか。

 

ボースター氏:中国のような国では、むしろエネルギー政策は大半の欧米諸国よりもはるかに明確でしっかりしている。例えば、投資はガスなどのエネルギーセクターに向けられており、石炭などにはあまり向けられていないことは明らかだ。どこに投資する必要があり、最終的なゴールは何かがはるかに明確に分かる。そうなれば業界として実際に貢献することができる。調査や開発予算を積極的に充てることができる。そうした状況は欧米にはない。

 

WSJ:エネルギー政策と言えば、特に水圧破砕(シェールガスの掘削方法)に関して、米政府に何を求めるか。

 

ボーサー氏:われわれが求めているのは、適正な基準が定めた明確な規制によるビジネス環境だ。それが州レベルの規制であろうが、連邦レベルの規制であろうが、個人的にはどうでもいい。何をすべきかを明確にしてほしいだけだ。

 

WSJ:米国内では大量の天然ガスが発見されている。それらガスの発見によって、今後どのようなことが起こるとみているか。

 

ボーサー氏:天然ガスは安価で利点の多い供給原料であり、米国の新たな産業化に活用できる可能性がある。製造や石油業界を復活させられる可能性があり、そうすれば雇用が創出される。米国がこのチャンスに飛びつかないとすれば不思議だ。例えば中西部。非常に工業化された地域にすることがきれば、これまで海外にアウトソースしてきた多くの雇用を取り戻すことができる。

 

WSJ:国際エネルギー機関(IEA)は先日、石油の世界的高騰を防ぐためには、イラクが日産600万バレル生産する必要があるとの見方を示した。シェルはイラクで非常に積極的に活動しているが、この見方は現実的か。

 

ボーサー氏:技術的観点から言えば実現可能だ。しかし、それには政治的安定も必要だ。現在までのところ上々だ。1年以上先の政治状況については予測はしないことにしている。バスラは治安状況は安定化しているものの、安全な環境ではない。改善はしている。建物の屋根を耐ロケット仕様にする必要はなくなった。

 

WSJ:シェルはナイジェリアで外資系として最大の産出企業だ。同地での事業運営は容易になりつつあるか、それとも逆か。

 

ボーサー氏:過去5、6年に関しては改善していた。12年ついてだけ言えば、(事業環境は)悪化している。それは汚職に関してだが、通常の主な問題は生産妨害や原油の盗難だ。これ(原油盗難)は今や、いわばビジネスと化し、年間60~70億ドル規模にまで拡大している。(ニジェール)デルタでは、大きな資金源となりつつあり、多くの雇用を生んでいる。好ましい兆候ではない。

http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323284004578247280337532130.html?mod=djem_Japandaily_t