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政争より被災地の復興優先を(河北新報) 東日本大震災をもう忘れた政治の傲慢さに、唇を噛む住民

2014-11-19 12:22:18

客足が徐々に遠のいている仮設商店街。「選挙より復興が先」。被災者の嘆きは深い=18日、石巻市鮎川浜
客足が徐々に遠のいている仮設商店街。「選挙より復興が先」。被災者の嘆きは深い=18日、石巻市鮎川浜
客足が徐々に遠のいている仮設商店街。「選挙より復興が先」。被災者の嘆きは深い=18日、石巻市鮎川浜


東日本大震災の被災地では18日、21日の衆院解散を表明した安倍晋三首相への批判が渦巻いた。「政争より復興を」「忘れられたよう」。

津波被害や原発事故の影響は続き、震災から3年以上が過ぎても再生の実感は乏しい。国政に届かぬ思いに、被災者のいら立ちが募った。

 
「何でいま、選挙なのや」。宮城県南三陸町歌津の漁業高橋七男さん(65)はあきれ顔で話す。「政権を維持したい安倍さんの保身策に見える」と切り捨てた。

 
衆院選に投じられる国費は約700億円。高橋さんは「その金を復興や社会保障、財政再建に回せないのか」と憤った。

 
石巻市鮎川浜の仮設商店街「おしかのれん街」で食堂の店長を務める高橋賢次さん(34)も「選挙で税金を使うのは無駄」と突き放す。現地で計画される商業エリアは未整備のまま。「復興が進んだとは到底感じられないのに」と不満顔だ。

 
被災地の復興には国の後押しが欠かせない。が、衆院選となれば政治空白が生じるのは避けられない。
宮城県山元町で仮設住宅の自治会長を務める引地とも子さん(63)は「震災直後は政治に期待したけど…。小さな仮設には支援が十分に届かない。被災地は忘れられたんだね」とため息をつく。

 
東京電力福島第1原発事故は収束しておらず、先の見えない生活を強いられている被災者も数多い。南相馬市小高区から埼玉県三郷市に避難する馬場昭久さん(66)は「内閣改造で環境相や復興相が新しい人になったばかり。落ち着くまで交代しない方がいい」と話した。

 
安倍首相は衆院解散の理由に消費税率の引き上げ先送りを掲げる一方、再延期は明確に否定した。
岩手県山田町の主婦木村真知子さん(61)は「消費税が8%になって生活が苦しくなった。増税先送りは助かるが、(解散の判断は)いまひとつ理解できない」と複雑な表情を浮かべた。

 
仙台市若林区のパート菅野智穂さん(29)は、自宅を9月に現地再建したばかり。「消費税増税で生活が良くなる実感があるなら喜んで払う。でも、そんな感じは全くない」と疑問を投げ掛けた。

 

http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201411/20141119_13018.html