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安倍政権、在独日本総領事を通じて外国人記者に圧力?:ドイツ紙特派員の告白が話題に(The NewClassic)

2015-04-11 13:34:24

Carsten Germis氏
Carsten Germis氏
Carsten Germis氏


日刊紙「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング」の東京特派員であったCarsten Germis氏の離任記事が話題になっている。

同氏は、2010年1月に東京へ着任してきて以来、日本がエリートとメディアの関係を含めて、歴史修正主義的な傾向を持つ安倍政権によって明確な転換を迎えたと指摘。

安倍政権の姿勢を報じたGermis氏に対して、在フランクフルト日本総領事や外務省が、さまざまな “圧力” をかけてきた具体的なエピソードも語られるなど、同政権とメディアの関係などに示唆的な内容となっている。

 

日本は大きく変化した


 

Germis氏の記事は、2010年に同氏が着任して以来、日本が大きく変化したという指摘から始まる。中でも最近の1年間に生じた出来事は、彼の仕事に大きな影響を与えたという。

同氏は、日本のエリートと外国人メディア・記者の間に非常に大きな認識の乖離があり、海外メディアからの批判的論調を日本のエリートが受け入れられないのであれば、それは大きな問題を生むことになるだろう、と懸念する。


メルケル首相は “友情” を示していない?


 

ドイツ・メルケル首相の訪問に際して日本経済新聞は、同首相が、安倍首相の歴史認識や日本の原発に対する姿勢に批判的で、”友情” を示すことがなかったと報じた。

しかしこれについてGermis氏は、友情とは「単に同意することなのだろうか?」と問いかけ、友人が誤った方向に向かう時に、それを批判することは友情ではないのか?と述べる。

同氏は、5年にわたる東京への特派員経験から、日本に対する友情、親愛の念は深まったという。しかし一方で、一部の日本のエリートやメディアは、同氏について、単に日本への友情を欠いて批判ばかりする外国人記者だと認識している、と指摘。

こうした認識の乖離が大きな懸念になる可能性があることを示唆している。


2012年の選挙後、事態が一変


 

Germis氏によれば、民主党政権期における政治家は、外国メディアに対して、日本の政策を説明することに懸命だったという。報道陣も、委縮することなく政府の政策を批判したが、政治家もまた、懸命に彼らの政策を説明していた。

しかし、2012年に安倍政権が勝利を収めて以降、事態は一変した。安倍首相は、Facebookなどの新しいツールによって発信を強化したように見えるが、一方で日本が抱える巨額な政府債務について語ることは減っていったという。

安倍政権の閣僚から、エネルギー政策、アベノミクスが抱えるリスク、憲法改正など、記者の質問に明確な答えが得られることは無くなっていったそうだ。

 

外務省からの攻撃


 

そしてついに、5年前には考えられなかった、外務省からの攻撃(attacks)もはじまった。Germis氏による、安倍政権の歴史修正主義に関する記事が報道された後、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング紙編集長のもとに、在フランクフルト日本総領事が訪れたというのだ。

総領事は東京からの抗議を伝えた上で、こうした記事の内容が「中国によるプロパガンダ」に利用されていると述べたそうだ。

されていると述べたそうだ。


記者や新聞社を侮辱


 

Germis氏による強い憤りはつづく。同紙編集長が、領事に対して記事の内容が誤報である事実の提示を求めたところ、総領事は「金が絡んでいるのでは?」とまで述べて、同氏や編集長、そして新聞社を侮辱(insulting )したというのだ。

また総領事は、ビザ取得のために中国のプロパガンダを書かざるを得ないのだろう、と哀悼の意すら示したのだという。こうした驚くべき姿勢に、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング紙が屈することはなく、むしろその批判的な論調は強まった。


強まる高圧的態度


 

しかしGermis氏によれば、ここ数年で高圧的な態度は強まっている。2014年になると、外務省は明らかに安倍政権に対する批判記事を攻撃しはじめ、「歴史の歪曲」や安倍政権の国粋主義的な立場によって「東アジアのみならず世界から日本は孤立する」といった表現に対して抗議がはじまったという。

ほかにも同氏が、中国から賄賂を受け取っているという領事のコメントについて正式に抗議した際には、「誤解だ」という回答のみがくるなど、外務省からの姿勢は厳しいものになる一方のようだ。


とはいえ…


 

記事では他にも、政権が外国メディアの記者たちを高待遇で接待しようとするものの、結局それは逆効果でしかないこと、慰安婦問題に際しても、政府から「説明」があったことなどが述べられている。

とはいえ、Germis氏は日本における報道の自由が脅かされているとは考えていない。日本は、特派員にとっては素晴らしい国であり、依然として世界有数の豊かな、開かれた国だと締めくくる。

同氏は、「調和が、抑圧や無知から来るべきではないと信じている。真にオープンで、健全な民主主義こそが、5年間過ごした私の素晴らしい故郷にとっての、大きな目標だろう」と語っている。

この記事は、普段なかなか見ることができない外国人記者からのストレートな視点、そして安倍政権による外国メディアに対する具体的な姿勢を記した記事として、すでに大きな注目を集めている。興味のある方は、ぜひ原文を参照していただきたい。

記事本文:On My Watch | Foreign Correspondents’ Club of Japan.

 

http://newclassic.jp/21785
Photo : www.stuttgarter-zeitung.de