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WCPFC:太平洋のまぐろ資源管理、失敗に終わる(WWF)

2012-03-30 22:10:42

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【グアム発】3月30日、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の第8回年次会合が閉幕。課題となっていたメバチ、キハダの過剰漁獲や漁船の増加の抑制などを目的とした、より実効性の高い措置への改定は、各加盟国間の利害が対立した結果、失敗に終わった。これにより、世界で最も資源量が多いとされる海域での有効な資源管理措置に疑問が残ることになる。

特に漁獲による資源への負荷が高まりつつあるメバチについては、現在過剰漁獲状態にあるにも関わらず、状況を改善するための有効な打開策を打ち出せなかった。また、生産増加が懸念されるキハダについても、実効性のある管理措置は確立できなかった。

今回のWCPFCにおける成果としては、ヨゴレ(Carcharhinus longimanus:サメの一種)や海棲哺乳類の保全措置が採られた。一方、巻き網漁業によって混獲されるジンベイザメや絶滅の恐れのあるマグロ類の保全措置に対しては無策であった。

WWFは、ビンナガを漁獲対象とした中国や台湾による延縄(はえなわ)漁船の急激な増加に対しても懸念を抱いている。ビンナガの生産量は近年倍増しており、同時に海鳥など絶滅の恐れのある種の混獲のリスクを増大させている。閉幕に際して、WWFジャパン水産プロジェクトリーダーの山内愛子は環境保全団体を代表し、WCPFCに対して次回会合でビンナガの保全管理措置を採択するよう求めた。この意見表明は、日本や太平洋島嶼国によって支持された。

WWF国際漁業プログラム・マグロ保全担当であるダニエル・サダバイは「マグロ資源の持続可能な管理に向けた歩みは、不明瞭で落胆するほどの遅さであり、後退した感が否めない措置もある。優良な漁業管理措置を導入しない限り、WCPFCは世界で最も豊かな漁場の一つである中西部太平洋海域の将来を危ういものとしている」と述べた。

WWFはWCPFCおよびその加盟国に対し、次回会合において速やかに予防原則に基づいた管理措置の採択が実現されることを強く要望する。消費者や流通関係者による持続可能なまぐろの需要が世界的な増加傾向にあるなか、WCPFCが予防原則に従ったまぐろ管理措置の採択に失敗したことは極めて遺憾であると、WWFのサダバイは述べている。

太平洋海域におけるまぐろ漁業は、漁獲努力量の削減を奨励するような仕組みが真剣に検討されるべき時が来ており、太平洋沿岸域で長期的な経済活動を可能とする、持続可能な漁業管理の仕組みづくりに本腰を入れて向き合うべきである。WWFジャパンの山内愛子は、「WCPFCは、太平洋のまぐろ漁業に対する責任をしっかり果たすべきであり、特に規制が必要となっている努力量については、漁船数を資源量に見合った適切な数へ抑えるよう道筋を定めるべきである」と述べている。

注釈


予防的なアプローチによる漁業管理は、長期的に検討した際に資源状況や環境の健全性に許容不可能なリスクをもたらす操業の禁止を原則とする。予防的なアプローチの導入とは、多くの場合、事前に合意した管理措置の指針(または「漁獲管理方策」)に基づいて意思決定することである。

 

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