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米小型モジュール原発(SMR)事業の頓挫で、環境NGOと原子力NPO団体が、日本から出資していた政府系金融機関の国際協力銀行(JBIC)の損失額の開示と、責任を問う共同声明(RIEF)

2023-11-19 01:45:34

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 環境NGOのFoEJapanと原子力NPOの原子力資料情報室は、小型モジュール原子炉(SMR)の建設事業を進めていた米国のNuScal Power社が、事業からの撤退を宣言した問題で、同社に日本の政府系金融機関の国際協力銀行(JBIC)が出資していたことを重視、JBICに対して出資に伴う損失額の開示と、同事業に公的資金をつぎ込んだことの責任を明らかにするよう共同声明を出した。

 

 NuScale のSWR事業は、同社とユタ州自治体電力システム(UAMPS)が事業者となり、アイダホ州の同国立研究所内でSMRを使った脱炭素発電プロジェクト「カーボンフリーパワープロジェクト(CFPP)」事業を進めていた。同事業はNuScaleの出力77MWのSMRを6基設置し、太陽光や風力などの気象条件によって発電にムラのある再エネ発電での電力を、SMR発電でバックアップして、安定した脱炭素発電を実現するとの触れ込みだった。

 

 しかし、SMRの予想発電コストがなかなか下がらず、今年1月には、予想発電コストが当初比53%増の1MW時当たり89㌦と、再エネによる発電コストより20㌦以上も高くなることが分かり、UAMPSの会員メンバーの脱退が相次いだ。その結果、事業者は事業の継続ができないと判断。プロジェクト自体の終了を決断した。https://rief-jp.org/ct5/140464?ctid=76

 

 同社の事業には日本からJBICが、日揮ホールディングス、IHIとともに出資してきた。日本勢各社は「Japan NuScale Innovation, LLC」を組織し、資金面から事業を支援するとともに、経済産業省資源エネルギー庁がホームページでCFPPプロジェクトを「次世代の原子炉」として紹介するなど、官民挙げて、同事業を「実証性の高い原発」として国内でも推奨してきた。このうち、JBICは今年9月、出資分の一部を中部電力に譲渡している。

 

 環境NGOと原子力NPOの2団体は、これまでもSMRについて「SMRという新たな装いをしていようとも、ライフサイクルにわたる放射能汚染、核廃棄物、事故リスクに加え、テロや戦争のターゲットとなるリスクなどの問題を抱えていることは、従来の原発と何ら変わりない」と指摘。SMRは経済性が高いと喧伝されるが、実際には単位発電量当たりのコストはむしろ増加するとして、リスクが高いSMRには出資すべきではないと、JBIC等に要求してきた経緯を説明している。

 

 

 こうしたことから、「NuScaleのSMRにコスト競争力がないことは(これまでも)歴然としていた」「今回の計画中止はSMRの経済的脆弱性が明らかになった結果だ」と指摘、リスクの高い事業に公的資金を投じたJBICの説明責任を問う、としている。

https://foejapan.org/issue/20231110/14861/