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五輪決定と原発事故。 東京開催が認められても、「福島の安全」を意味しない (神奈川新聞:社説)

2013-09-11 01:11:49

健康不安はオリンピックでは払拭できない

 


健康不安はオリンピックでは払拭できない
健康不安はオリンピックでは払拭できない


2020年の夏の五輪・パラリンピックの開催地が東京に決まった。言うまでもないが、どこで開催されようと東京電力福島第1原発事故の影響から福島の人々を守ることは国の責務だ。国際オリンピック委員会(IOC)の評価委員会の懸念を払(ふっ)拭(しょく)したと評されるかもしれぬ安倍晋三首相のプレゼンテーションに不安を覚えずにはいられない。

 首相は原発の汚染水問題の懸念に対し「状況はコントロールされている」と言い切った。本当だろうか。

 制御できていないからこそ汚染水漏れは起きた。プレゼン直前に駆け込みでまとめた政府主導の対策も、抜本的な解決に資するものとは言い難いものだ。

 汚染水は「港湾内の0・3キロ圏内でブロックされている」とも語った。水が外洋と行き来していることは東電も認めている。試験操業をとりやめた地元漁協は「心配のしすぎ」で、風評被害にすぎないのか。漁ができないということは実害以外の何ものでもない。

 汚染水問題は収束をみない原発事故の一つの様相にすぎない。廃炉作業は40年続き、福島の人々の不安が消えることはない。

 事故の影響を小さく見せる、あるいは、ないもののように扱う口ぶりは健康への影響についても同様だった。「今までも、現在も、これからもまったく問題ないと約束する」と言うが、福島では甲状腺がんの子どもが見つかっている。事故との因果関係は未解明だが、問題なしとはできない。災禍の実相を直視しなければ再び対応を誤ろう。

 安全を約束した首相発言は、国際社会に向けた公約と取ることはできる。一方で、開催地を選んだのはIOCにすぎない。東京開催が認められたからといって、それは福島の安全を意味しない。

 招致委員会の竹田恒和理事長や猪瀬直樹都知事が「東京は福島と250キロ離れているから安全だ」と発言し、国内外から「東京が安全ならいいのか」との批判を浴びたのは記憶に新しい。発言を問題視しなかったIOCにも疑問符がつく。

 高まるお祭りムードは福島の嘆きを封じ込めはしまいか。平和を象徴するスポーツの祭典が福島の切り捨て、置き去りにつながるのなら、これほどの悲劇はない。招致レースは終わっても、原発事故はこの瞬間も続いている。

 

http://news.kanaloco.jp/editorial/article/1309100001/