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岐路に立つ除染 避難地から除染後の故郷に「帰村」したものの 高い線量 再除染基準示されず(福島民報)

2013-09-24 11:39:43

自宅の植え込みに線量計をかざす久保田さん。村民の帰還を促すためには再除染が必要だと感じている
自宅の植え込みに線量計をかざす久保田さん。村民の帰還を促すためには再除染が必要だと感じている
自宅の植え込みに線量計をかざす久保田さん。村民の帰還を促すためには再除染が必要だと感じている


自宅の庭の植え込みに線量計をかざすと「毎時0.5マイクロシーベルト」という数字が表示される。久保田安男(78)は川内村下川内の自宅で妻キミエ(73)と共に暮らす。村から配布された線量計の扱いにも慣れた。
 東京電力福島第一原発事故で村は一時、全村避難した。久保田夫婦も、郡山市に避難していた。昨年1月に村が「帰村宣言」したのを受け、6月に戻った。

 
 原発事故前は農業を営んでいた。畑では今もカボチャ、キュウリ、トマトなどを作っているが、全て自家用だ。「放射性物質は検出されない。だが、出荷しても川内の野菜は敬遠される」と安男は寂しく笑う。それでも久保田夫婦は村で暮らす道を選んだ。「やっぱり自宅が1番いいから」と口をそろえる。
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 村内の宅地除染は昨年度中に完了した。安男の自宅も昨年5月に除染を終えた。ただ、自宅裏の山の近くには国が除染の長期目標としている年間1ミリシーベルト(毎時0.23マイクロシーベルト)を超える場所がある。除染終了直後、旧緊急時避難準備区域1061戸のうち、半数近くに当たる約480戸は年間1ミリシーベルトを超えていた。

 
 帰村者は今年4月現在、約1300人いる。原発事故前の約2800人に対し半数を下回る。久保田夫婦のような帰村者は今のところ「少数派」だ。放射線への不安から帰還をためらう住民は少なくない。

 
 一方、村内に居ながら、自宅に寝泊まりできない村民もいる。同村下川内にある仮設住宅には、居住制限区域や避難指示解除準備区域に指定されている地区に自宅がある村民を中心に、47世帯89人がいまだに避難しているのが現状だ。

 
 安男は言う。「正直言って、自分としては今の線量をそれほど気にはしていない。ただ、できるだけ線量を下げなければ、避難している人たちは戻らないだろう」。村の再興のために、再除染の必要性を感じている。
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 村はかねてから国に再除染を求めてきた。担当者から返ってくるのは「前向きに検討します」という「お役所言葉」ばかりだった。今月10日、環境省は放射性物質の取りこぼしが見つかった場合は再除染を認める方針を正式に発表した。しかし、村の担当者は「具体的な基準や方法などについて明確にしていない」と再除染の実現性に懸念を示す。

 
 国が方針を示す以前に、村は再除染の必要性を裏付けるため、ある機器の導入に踏み切っていた。放射線を可視化する測定装置「ガンマカメラ」だ。測定は今年4月から久保田夫婦が暮らす第七行政区から始まった。(文中敬称略)

 

http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2013/09/post_8227.html