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日本学術会議が 「東電福島第一原発事故からの教訓」報告書公表 「科学者への不信」に懸念(FGW)

2014-06-23 16:13:13

gakushutukaigiキャプチャ
gakushutukaigiキャプチャ日本学術会議は「東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓」と題する報告をまとめ、公表した。東電事故については政府、国会、民間、学会等でそれぞれ報告書がすでにまとめられている。学術会議は原発の是非論ではなく、現在福島にある事故原発の廃炉、廃棄物処分等を進めるうえでの課題処理に焦点をあて、事故の教訓を生かす視点を提言している。

 

報告書は、学術会議総合工学委員会原子力事故対応分科会を設置、委員長・矢川元基(原子力安全研究協会理事長)、副委員長・山地憲治(地球環境産業技術研究機構理事・研究所長)の下で、主に原子力技術分野の専門家が参加してまとめた。

 

報告書の概要は、まずすでに複数の事故報告書が発表されているが、まだ「未解決なものが数多く残されている」として、実際の事故原発の処理を「今後長期間にわたって対処すべき課題」として提起した。

 

その際の視点として、福島事故を防げなかったのは、米スリーマイル島事故や旧ソ連のチェルノブイリ事故などにもかかわらず、「日本は原子力の安全にかかわる本格的な体制構築のためにこれらを参考にするまでには至らなかった」との認識を示した。すでに他の報告書でも原発リスクに対する政府、東電の軽視が指摘されているが、学術会議自体の問題意識の希薄さを含めて、日本の科学的知見の不十分さを追認した形だ。

 

報告は福島事故の根源的要因として、原発の安全性を向上するための全体を俯瞰する不断の努力を怠ったことにある、としている。これは、日本の経済産業省・資源エネルギー庁主導の原発政策に失敗の原因があることを言外に指摘している。

 

福島事故の教訓としては、過酷事故を防止する段階までは実施していたが、事故が発生した場合の対応が疎かになっていたとして、「安全神話」の盲信と、リスクマネジメント力の弱さをあげた。原発の過酷事故リスクの存在を社会に明確に示すとともに、放射線被爆リスクの科学的知見の普及にも言及している。

 

原子力政策への批判だけではなく、科学者自身の問題点についても触れている。学術会議は2013年1月に「科学者の行動規範」を改定し、原子力安全のための責務を明確化しているが、科学者の中立性を改めて強調している。この点は、事故後も多くの科学者の言説をめぐって「原子力ムラ」の威光を借りているのでは、との疑念が払拭されていないことなどを意識したものとみられる。

 

「科学が信用されない」事態への懸念から、「科学コミュニティは、社会と原子力専門家とのコミュニケーションの推進役となり、相互の信頼関係を構築するための中心的役割を担わなければならない」などとしている。

 

報告書の全文: http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-h140613.pdf